サービス業ガイダンス

業界総括

サービス業全体は売上高増加傾向にある。訪日外国人の増加に伴い、宿泊業、飲食業等が好調。東京五輪に向けてさらなる訪日外国人の増加が見込まれ、旺盛なサービス消費への期待が高まる。一方で、外国人受け入れ態勢の整備および人材の確保が課題である。

現状の業界動向

(1)訪日外国人増が宿泊業、飲食業等に追い風

ここ数年続いた円安や、中国や東南アジア諸国のビザ発給要件の緩和などにより、平成28年の訪日外国人の数は2,400万人を超えて過去最高を記録。平成27年の1,970万人に比べ21.8%増となった。平成29年に入っても前年を上回る訪日外国人数が継続している。東京五輪の平成32(2020)年に向け、今後さらに訪日外国人の増加が見込まれている。

個人旅行客やリピーターが増加する中、訪日観光客の行動が“モノの購買”から日本食を食べることや日本の文化や生活の体験など“コトの消費”に変化しつつある。たとえば、訪日観光客の日本の質の高い美容や医療への関心が増加しており、美容室、エステ、ネイル、美容整形外科などに来店する訪日外国人が現れている。平成28年の訪日外国人旅行消費額は、速報値で過去最高の3兆7,476億円(前年比7.8%増)となった。

(2)民泊の解禁

訪日外国人の増加により都市部での宿泊施設不足は深刻化している。宿泊施設の受け皿として民泊にも期待が集まっており、平成29年6月に民泊新法が成立した。民泊事業者に都道府県への届け出を義務付け、年間提供日数の上限を180日に定めた。

(3)労働力不足の深刻化・外国人労働者の活用

国内人口減・少子高齢化等を背景に、サービス業の人手不足は深刻になっている。特に中小企業では賃金を上げる動きが活発で、中小企業の賃金上昇率は大企業を上回って推移している。平成28年の賃金上昇率は、500人以上の大企業が0.6%であったのに対し、社員100人未満の中小企業が0.9%であった。賃上げの背景として、最低賃金が平成28年10月に引き上げられ、全国平均で25円上昇したことも影響している。消費者マインドの回復が本格化しない中、商品・サービス価格を上げにくい一方で賃金の引き上げ傾向は今後も続くとみられ、サービス業企業の利益を圧迫する可能性がある。

労働力不足を補う新しい労働力として、外国人労働者の活用可能性も出てきている。平成29年2月、内閣府は、外国人が仕事に就くのに必要な在留資格を得るための実務経験や学歴などの条件を国家戦略特区で緩め、通訳や調理師らサービス業に携わる外国人が働きやすいようにすると発表した。宿泊業、飲食サービス業においては、訪日外国人の接客において「言語」が壁になることが多く、訪日観光客の急増に対応するうえでもこの仕組みは注目である。また、平成29年11月から、介護分野でベトナム人の外国人技能実習生の受け入れが開始となる。3年間で1万人の参加が見込まれ、人材不足が深刻な介護業界で、人材の確保につながる期待がもたれている。

今後(平成29年11月頃まで)の見通し

(1)訪日外国人対応の本格化

訪日外国人の取り込みに関しては、“おもてなし”の一環として外国語対応や外国人向け広告宣伝の必要性が増す。現時点では特に対策を行っていない企業も多いが、一部の飲食店や美容室等はすでに英語や中国語のできるスタッフの採用・育成やグローバル対応の口コミサイトの活用等により、訪日外国人の来店を増やしている。外国語教育に力を入れる企業の登場は、語学学校等教育業においても商機になる。

訪日外国人の日本での過ごし方は、ますます幅が広がることが予想され、リピーターの地方都市における体験型旅行へのニーズの高まりは旅行業や娯楽業にとっても恩恵がある。

(2)進むIoTの活用

サービス業におけるIoTの活用も徐々に広まりつつある。教育産業では、スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い電子端末を利用する事業者が登場している。労働力不足を補う上でもIoTは重要な役割を担う。家事代行業等では依頼者とサービス提供者をITでマッチングするようなサービスも登場している。飲食業では、IoTを用いたコールシステム等の活用により、効率的かつ顧客のニーズに合ったオペレーションが可能になる可能性がある。

(3)外食産業の新業態展開

外食産業は客足堅調で、一般社団法人日本フードサービス協会の『外食産業市場動向調査』によると、平成29年3月の売上高は7ヵ月連続して前年を上回った。一方で、平成29年2月より開始された「プレミアムフライデー」は、数カ月経った現在浸透は進んでおらず、飲食業、旅行業等への需要喚起には大きく結びついていない現状にある。このような状況下、新業態に進出する外食チェーン大手の動きが目立っている。牛丼チェーン「松屋」を展開する松屋フーズはラーメン店やとんかつ店を、うどんの「丸亀製麺」を展開するトリドールはとんかつ専門店を、すかいらーくはハワイアンカフェを開店するなどしている。

取引深耕のポイント

消費者のニーズの多様化に関して、どのような取組みを行っているか。
アルバイトやパートも含め、人材確保の方策をどのようにとっているか。
適性に応じて、女性や高齢者、海外人材など多様な人材の活用を推進しているか。
訪日外国人の増加に対して、どのような取組みを行っているか。
自社の目に見えない強みをどのように訴求しているか。
アルバイトやパートも含めた従業員に対し、SNSに関する教育や禁止事項の徹底等、コンプライアンスに留意しているか。
東京五輪や政府の成長戦略、その他政府主導の施策(プレミアムフライデー等)に関連してどのような商機があるか。
国内消費者の高齢化に対して、どのような取組みを行っているか。
(株式会社 日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 コンサルタント 小幡 京加)