サービス業ガイダンス

業界総括

サービス業全体は売上高増加傾向にある。訪日外国人の増加に伴い、宿泊業、飲食業等が好調。東京五輪に向けてさらなる訪日外国人の増加が見込まれ、旺盛なサービス消費への期待が高まる。一方で、外国人受け入れ態勢の整備および人材の確保が課題である。

現状の業界動向

(1)訪日外国人増が宿泊業、飲食業等に追い風

ここ数年続いた円安や、中国や東南アジア諸国のビザ発給要件の緩和などにより、2017年の訪日外国人の数は2,800万人を超えて過去最高を記録。2016年の2,404万人に比べ19.3%増と、前年を上回る訪日外国人数が継続している。国土交通省『宿泊旅行統計調査』によると、外国人延べ宿泊者数は、2017年12月は672万人泊で、前年同月比21.4%増であった。東京五輪の2020年に向け、今後さらに訪日外国人の増加が見込まれている。

個人旅行客やリピーターが増加する中、訪日観光客の行動が“モノの購買”から日本食を食べることや日本の文化や生活の体験など“コトの消費”に変化しつつある。たとえば、訪日観光客の日本の質の高い美容や医療への関心が増加しており、美容サービスの利用は訪日外国人の日本滞在目的の一つになっている。2017年の訪日外国人旅行消費額は、速報値で過去最高の4兆4,161億円(前年比17.8%増)となった。

(2)民泊の解禁

訪日外国人の増加により都市部での宿泊施設不足は深刻化しており、宿泊施設の受け皿として民泊にも期待が集まっている。2018年6 月15日、住宅宿泊事業を実施する場合の一定のルールを定めた住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行された。

民泊大手Airbnbは、同月、新戦略としてソフトバンクや全日本空輸、みずほ銀行など36の国内企業と「Airbnb Partners」と名付けたプラットフォームを立ち上げた。パートナー企業の1つであるカルチュア・コンビニエンス・クラブは、Airbnbに宿泊することでTポイントが貯まるサービスの提供を発表、年内に開始する見込みである。

一方で新法施行に先駆け、違法物件の削除について観光庁から登録申請中の住宅宿泊仲介業者に通知が2018年6月に発出されたことにより、民泊物件数は大幅に減少、民泊運営事業者のハードルは上がっている。民泊の運営や代行を手がけるTATERU bnbが、鍵の受け渡しやチェックインといった民泊運営事業者にとって煩雑な作業をIoTデバイスを用いスマート化できる「bnb kit」のレンタル予約を開始するなど、民泊運営事業者を支援するビジネスも登場している。

(3)労働力不足の深刻化・外国人労働者の活用

国内人口減・少子高齢化等を背景に、サービス業の人手不足は深刻になっている。特に中小企業では賃金を上げる動きが活発で、中小企業の賃金上昇率は大企業を上回って推移している。政府は長期的に最低時給1,000円を目指すと明言しており、賃金の引き上げ傾向は今後も続くとみられ、サービス業企業の利益を圧迫する可能性がある。

労働力不足を補う新しい労働力として、外国人労働者の活用可能性も出てきている。2017年2月、内閣府は、外国人が仕事に就くのに必要な在留資格を得るための実務経験や学歴などの条件を国家戦略特区で緩め、通訳や調理師らサービス業に携わる外国人が働きやすいようにすると発表した。宿泊業、飲食サービス業においては、訪日外国人の接客において「言語」が壁になることが多く、訪日観光客の急増に対応するうえでもこの仕組みは注目である。また、2017年11月から、介護分野でベトナム人の外国人技能実習生の受け入れが開始された。3年間で1万人の参加が見込まれ、人材不足が深刻な介護業界で、人材の確保につながる期待がもたれている。

今後(2018年11月頃まで)の見通し

(1)訪日外国人対応の本格化

訪日外国人の取り込みに関しては、“おもてなし”の一環として外国語対応や外国人向け広告宣伝の必要性が増す。一部の飲食店や美容室等はすでに英語や中国語のできるスタッフの採用・育成やグローバル対応の口コミサイトの活用等により、訪日外国人の来店を増やしている。外国語教育に力を入れる企業の登場は、語学学校等教育業においても商機になる。

訪日外国人の日本での過ごし方は、ますます幅が広がることが予想され、リピーターの地方都市における体験型旅行へのニーズの高まりは旅行業や娯楽業にとっても恩恵がある。

(2)進むIoTの活用

サービス業におけるIoTの活用も徐々に広まりつつある。訪日外国人対応として、接客に翻訳アプリや機器を活用する事業者が登場した。また、教育産業では、スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い電子端末を利用する事業者が登場している。労働力不足を補う上でもIoTは重要な役割を担う。家事代行業等では依頼者とサービス提供者をITでマッチングするようなサービスも登場している。飲食業では、IoTを用いたコールシステム等の活用により、効率的かつ顧客のニーズに合ったオペレーションが可能になる可能性がある。

エイチ・アイ・エスは2015年に開業した「変なホテル」にて、フロントやポーター、清掃などをロボットが行い人件費を通常の4分の1に抑えている。

(3)堅調な外食産業

外食産業は客足堅調で、一般社団法人日本フードサービス協会の『外食産業市場動向調査』によると、2017年の売上高は前年比103.1%と3年連続して前年を上回った。客単価も前年同月比を上回っている。ご当地メニューや国産食材を使用した期間限定メニュー等が消費者の支持を得ているとともに、「インスタ映え」の影響により好調な売上となった。今年に入っても売上高は前年比100%超が継続している。

取引深耕のポイント

消費者のニーズの多様化に関して、どのような取組みを行っているか。
アルバイトやパートも含め、人材確保の方策をどのようにとっているか。
適性に応じて、女性や高齢者、海外人材など多様な人材の活用を推進しているか。
訪日外国人の増加に対して、どのような取組みを行っているか。
自社の目に見えない強みをどのように訴求しているか。
アルバイトやパートも含めた従業員に対し、SNSに関する教育や禁止事項の徹底等、コンプライアンスに留意しているか。
東京五輪や政府の成長戦略に関連してどのような商機があるか。
国内消費者の高齢化に対して、どのような取組みを行っているか。
(株式会社 日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 マネジャー 小幡 京加)