小売業ガイダンス

業界総括

足元の企業業績は比較的堅調であるが、消費者の賃金の伸び悩み等を背景に小売業を取り巻く環境は厳しい状況が続いている。平成28年度に比べるとやや持ち直しの兆しも見られるが、品目・地域・業態によるバラつきも大きく、全面的な消費の回復には程遠い。消費者のニーズに合わせた付加価値の高い商材の提供や、底を打った訪日外国人需要を取り込むことで売上確保に努めたい。

現状の業界動向

(1)スーパーの動向

全国のスーパーなどが加盟する日本チェーンストア協会会員企業の平成28年度第4四半期(1〜3月)の総販売額は3兆1,200億円で前年比減少(▲2.2%)となった。食料品は店舗調整後(既存店ベース)で前年同期比▲1.3%、衣料品が同▲6.3%、住関品が同▲3.8%といずれも苦戦した。平成29年4月は前年比プラスに転じるなど、持ち直しの動きも見られるが依然として厳しい状況が続く。

他の専門店とも競合するGMS(総合スーパー)の収益性は低迷している。各社は出店を抑制し、店舗の統廃合や既存店の改装などを通じて損益の改善を目指す。

(2)コンビニの動向

一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会が公表している統計データによると、平成29年5月度のコンビニエンスストア売上高は9,105億円で前年同月比+2.8%と好調を維持した。既存店ベースでみても、客単価がプラスとなったことで前年比+1.0%となった。弁当、惣菜やサラダ、カウンター商材が引き続き堅調に推移した。

ただし、客単価が上昇している一方で、来客数は伸び悩んでいる。新規店舗も含む全店ベースではプラス圏を維持しているが、既存店の来客数は平成29年5月に▲0.4%となり、15ヵ月連続でマイナスとなった。

コンビニエンスストア業界は大手3社(セブン・イレブン、ローソン、ファミリーマート)による寡占化が進んでおり、中堅以下のコンビニは苦戦を強いられている。大手3社も出店を拡大してきたため、成長余力は限られてきている。大手コンビニ間での競争に加えて、ドラッグストアなど異業種との競争も激しさを増している。

(3)百貨店の動向

日本百貨店協会によると、平成29年5月の全国百貨店の売上高は4,588億円となり、前年同月水準を維持した。百貨店は訪日外国人の使用する金額の減少に苦しんできたが、ここにきて訪日外国人消費は持ち直している。特に関西圏は関西国際空港の利用者数増加に伴い訪日外国人が顕著に増加しており、その影響で平成29年5月の大阪の百貨店売上高は前年比+5.8%と大幅に増加した。大阪地区の百貨店売上高は5ヵ月連続で前年水準を上回って推移している。

商品別にみると衣料品は前年同月比▲1.0%で19カ月連続のマイナスと振るわない。好調なのは化粧品で、平成29年5月は同+1.3%となり、26カ月連続で前年同月比がプラスの水準となっている。また、雑貨も前年比+7.0%となり、6ヵ月連続のプラスとなった。

今後(平成29年11月頃まで)の見通し

一般消費者層の賃金伸び悩み等を背景に小売関連は今後も引き続き厳しい状況が続くと予想されるが、雇用環境の改善(失業率の低下)や訪日外国人消費の持ち直し等を受けて、現状よりは改善するとの見方も増えている。

内閣府が発表した平成29年5月の「景気の現状判断DI(小売関連)」は前月比▲0.2ポイントの45.1となり、横ばいを示す50よりも5ポイント程度低い状況にある。一方で、先行きを示す「景気の先行き判断DI(小売関連)」は前月比+0.7ポイントの47.6と、現状判断DIに比べると高い水準にある。判断理由として、「インバウンド売上が持ち直しているため、これから良くなってくるのではないか(百貨店)」、「新商品を中心に徐々に客の反応がよくなってきている(コンビニ)」、「消費に関しては、価格に見合うと判断されれば、高額商材の購入も比較的早い段階で決まる事例が増えている(一般小売店)」といった先行きをポジティブに捉える内容も見られた。

小売事業者としては、引き続き徹底的な合理化(出店の抑制と店舗の統廃合を含む)を進めるとともに、比較的好調な商品領域の強化や、需要が再拡大しつつある訪日外国人の消費を積極的に取り込むなどして、収益改善につなげたい。

取引深耕のポイント

新卒者の採用をどのように考えているか。
法令遵守や社会保険への加入に対して、経営者はどのような方針を示しているか。
アルバイトやパートの維持や確保にどのような策があるか。
クレーム対処の方法があるか。
消費者の高齢化に対して、どのような取組みを行っているか。
訪日外国人の増加に対して、どのような取組みを行っているか。
適性に応じて、女性や海外人材など多様な人材の活用を推進しているか。
CDや医薬品などネット販売の影響を受ける小売店は、どのような対策を立てているか。
スマートフォンなど新たなメディアを活用した販売促進に取り組んでいるか。
東京五輪や政府の成長戦略、その他政府主導の施策(プレミアムフライデー等)に関連してどのような商機があるか。
(株式会社 日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 高津 輝章)