小売業ガイダンス

業界総括

足元の企業業績が堅調なことや、訪日外国人消費の伸びもあり、小売の分野も比較的堅調に推移してきた。しかし、直近の天候不順で客足が伸び悩んでいることに加えて、株式相場が大きく下落したこともあり、足元の不透明感は増しつつある。また、品目・地域・業態によって明暗は分かれており、人手不足から人員確保のための人件費支出が増加するケースも目立ち始めている。各社は業態の見直しやコストの削減に努めるとともに、消費者のニーズに合わせた付加価値の高い商材の提供や、旺盛な訪日外国人需要を取り込むことで売上確保に努めたい。

現状の業界動向

(1)スーパーの動向

全国のスーパーなどが加盟する日本チェーンストア協会会員企業の2017年10月〜12月期の総販売額は3兆4,213億円で前年同期比▲0.4%とほぼ横ばい水準となった。1月〜3月期(▲2.2%)、4月〜6月期(▲0.9%)と比べマイナス幅は縮小(7〜9月期は▲0.3%)してきており、持ち直しの傾向が見られる。食料品は店舗調整後(既存店ベース)で前年同期比▲0.1%と横ばい。衣料品は同+0.3%と増加に転じた。一方で住関品が同▲2.7%と苦戦した。

他の専門店とも競合するGMS(総合スーパー)の収益性は低迷した状況から抜け出せていない。例えば、イオンの2017年3月〜11月のGMS事業の営業利益は▲216億円と、前年同期の▲379億円から大幅に改善したものの、赤字が続いている。

(2)コンビニの動向

一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会が公表している統計データによると、2018年1月度のコンビニエンスストア売上高は8,374億円で前年同月比+2.1%と好調を維持した。売上高の前年同月比プラスは59ヶ月連続。サラダ・カット野菜等やカウンター商材、惣菜・調理麺等の中食が好調に推移した。

ただし、客単価が上昇している一方で、来客数は伸び悩んでいる。新規店舗も含む全店ベースではプラスとなる月が多いが、既存店の来客数は2018年1月に前年同月比▲2.8%となり、23ヶ月連続でマイナスとなった。

コンビニエンスストア業界は大手3社(セブン・イレブン、ローソン、ファミリーマート)による寡占化が進んでおり、中堅以下のコンビニは苦戦を強いられている。大手3社も出店を拡大してきたため、成長余力は限られてきており、単価の向上でなんとか成長を続けている状況にある。大手コンビニ間での競争に加えて、ドラッグストアなど異業種との競争も激しさを増している。例えばイオングループのドラッグストア、ウエルシアホールディングスは深夜営業や24時間営業の店舗を増やし、食料品の品揃え拡充なども進めている。

(3)百貨店の動向

日本百貨店協会によると、2018年1月の全国百貨店の売上高は5,157億円で、前年同月比▲1.2%となった。2017年11月〜2018年1月期の3ヶ月移動平均値は+0.1%とプラスを維持したが、大雪、寒波等の影響もあり客足は伸び悩んだ。訪日外国人消費は引き続き旺盛で、1月のインバウンド消費は284億円で前年同月比+31.6%と大きく伸び、単月で過去最高額を更新した。地区別にみると、大都市(10都市)は大阪、福岡を中心に堅調で全体で前年同月比+0.4%と6ヶ月連続プラスとなった一方、地方は▲4.6%と9ヶ月連続でマイナスとなった。

商品別にみると好調なのは化粧品(34ヶ月連続プラス)、雑貨(14ヶ月連続プラス)、美術・宝飾・貴金属(10ヶ月連続プラス)。一方、家庭用品(25ヶ月連続マイナス)、食料品(8ヶ月連続マイナス)は不調だ。

今後(2018年3月頃まで)の見通し

株式相場の上昇による高額消費の伸び、雇用環境の改善(失業率の低下)や訪日外国人消費の持ち直し等を受けて2017年は小売業の業績は比較的堅調に推移してきたものの、2018年に入って株式相場の大幅下落などもあり、やや不透明感が増してきている。

内閣府が発表した2018年1月の『景気の現状判断DI(小売関連)』は前月比▲5.4ポイントの47.1となり、横ばいを示す50を下回った。先行きを示す『景気の先行き判断DI(小売関連)』については、51.5と50を上回ったが、株式相場の下落等の事象は織り込んでおらず、今後は指数が悪化する可能性も考えられる。1月時点の判断理由としては、「春闘では大企業、中小企業共に大幅な賃上げが見込まれ、個人消費の拡大に一層の弾みがつく(百貨店)」、「食料品については、客の財布のひもが固いことで値段が下落傾向にあったが、ここにきて少しずつ高単価の商品も売れ始めるようになっており、今後は安値競争からの脱却も視野に入ってきた(スーパー)」といった先行きをポジティブに捉える内容も多く見られた。

小売事業者としては、引き続き徹底的な合理化(出店の抑制と店舗の統廃合・業態の見直しを含む)を進めるとともに、比較的好調な商品領域の強化や、旺盛な訪日外国人の消費を積極的に取り込むなどして、収益改善につなげたい。

取引深耕のポイント

新卒者の採用をどのように考えているか。
法令遵守や社会保険への加入に対して、経営者はどのような方針を示しているか。
アルバイトやパートの維持や確保にどのような策があるか。
クレーム対処の方法があるか。
消費者の高齢化に対して、どのような取組みを行っているか。
訪日外国人の増加に対して、どのような取組みを行っているか。
適性に応じて、女性や海外人材など多様な人材の活用を推進しているか。
CDや医薬品などネット販売の影響を受ける小売店は、どのような対策を立てているか。
スマートフォンなど新たなメディアを活用した販売促進に取り組んでいるか。
東京五輪や政府の成長戦略、その他政府主導の施策(プレミアムフライデー等)に関連してどのような商機があるか。
(株式会社 日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 高津 輝章)