経済概況と企業経営への影響

世界経済概況:世界経済の成長予想における当面のリスクはほぼ均衡状態にある

国際通貨基金(IMF)は、2018年1月に世界経済見通し(2018年1月版)を発表した。この見通しによると、2017年の世界のGDP成長率は3.7%、そして2018年は3.9%、2019年も3.9%になるとされている。

個別の国・エリアでみると、米国の2017年GDP成長率は2.3%、ユーロ圏は2.4%、中国は6.8%、日本は1.8%となっており先進国でも一定の成長がみられる。一方、内向き政策への傾倒や各種地政学的リスクなどは依然として顕著であり、中期的にはさまざまな下振れリスクがあるといえる。

世界経済トピックス:米国経済の行方

米国商務省の発表によると、米国の10〜12月期のGDP成長率は年率換算前期比2.6%増となった。米国経済の行方を大きく左右するとみられるのがトランプ大統領の発言である。これまで、気候変動に対する国際的な取り組みであるパリ協定離脱表明のほか、製造業の米国回帰を促す等「アメリカファースト」を推進してきている。直近では、2017年12月に成立した税制改革法案により、連邦法人税率は2018年に35%から21%に引き下げられる。これにより、米国企業だけではなく日本の現地法人も恩恵を受けられる見込みである。また、離脱を表明していた環太平洋経済連携協定(以下、「TPP」という)についても、参加に前向きな発言があるといった報道もみられる。改めてTPPに米国が加わると日本企業にとってもメリットがあると考えられ、動向が注目される。

世界経済トピックス:欧州経済の行方

2016年6月23日、英国においてEU離脱を問う国民投票が行われ、離脱を求める票が過半数を占める結果となった。その後、EU加盟国においてEU加盟の是非について問われることとなり、各国の選挙の大きな論点のひとつとなっている。

直近では、オランダ総選挙、フランス大統領選挙やイギリスの総選挙において論点となった。オランダやフランスでは、政権の交代までに発展しなかったものの、イギリス総選挙では与党保守党が過半数割れ。英国のEU離脱(Brexit)は今後の欧州経済の行方を左右するものになるであろう。

なお、実際の英国のEU離脱の手続きは、2017年6月から開始。今後の動向が注目される。

日本経済概況:高い成長を記録

2017年10〜12月期の実質GDP(国内総生産)は、前期比0.1%増、年率換算では0.5%増となった(2018年2月14日公表の1次速報値)。

日本銀行が2018年1月に公表した「経済・物価情勢の展望」では、「わが国経済は、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、きわめて緩和的な金融環境と政府の既往の経済対策による下支えなどを背景に、景気の拡大が続き、2018 年度までの期間を中心に、潜在成長率を上回る成長を維持するとみられる。2019 年度は、設備投資の循環的な減速に加え、消費税率引き上げの影響もあって、成長ペースは鈍化するものの、景気拡大が続くと見込まれる」という認識がなされている。また、同公表の政策委員の大勢見通しでは、2017年度の実質GDP見通しが+1.8〜+2.0%(中央値は1.9%)とされ、2017年10月に比して、高い成長率見通しとなった。

2025年問題による中小企業の後継者不足

2025年問題とは、わが国では2025年には団塊の世代が75歳を超える後期高齢者となり、国民の約2割が75歳以上、また約3割が65歳以上という「超高齢者社会」を迎えるということである。

さらに、これを中小企業の経営者に照らし合わせたとき、2025年には6割以上が70歳を超え、経済産業省の試算では、このうち現時点で後継者が決まっていない企業が127万社あるということである。また、後継者不足により休業・廃業・解散を余儀なくされる企業の半数は経常損益が黒字であり、このまま廃業が増加していけば、2025年までの累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDP(国内総生産)が失われる可能性があるということである。

成長力のある中小企業の廃業等は、わが国の産業基盤を弱めかねず、経済の活性化のためにも、後継者の確保や早めの事業承継をしやすくする必要がある。地域金融機関としては、商工会議所や支援センターなどと連携を深めて問題解決のための支援体制の強化に尽力する必要がある。

日本経済トピックス:働き方改革に関する取組み

2016年9月に安倍首相主導のもと総理大臣官邸で第1回「働き方改革実現会議」が開催された後、これまで複数回にわたり「働き方改革実現会議」が開催されている。

2017年3月28日に行われた第10回「働き方改革実現会議」では、働き方改革実行計画が決定され、個別項目に対する工程表が開示された。当該工程表の中では、現状や方向性の他、今後10年程度のスケジュールや指標が明示されており、今後の働き方改革の各種施策はこの工程表に沿って行われると想定される。

本国会における安倍首相の施政方針演説では「働き方改革を断行いたします」と宣言。働き方改革関連法案が議論されている。

法律が成立することで、会社の規模を問わず対応が必要になるであろう。本法案をもとに従業員にとってよい働き方を提示できる可能性があるとも考えられるため、特に経営者や人事担当者は、この動きに注目しておく必要がある。

(株式会社 日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 粟田 輝)