経済概況と企業経営への影響

世界経済概況:複数の主要国で「以前より大きな成長の勢いが見られる」

国際通貨基金(IMF)は、平成29年4月に世界経済見通し(2017年4月版)を発表した。この見通しによると、平成29年の世界全体の予想成長率は3.5%、平成30年は3.6%になるとされている。

個別の国・エリアでみると、米国の平成29年GDP成長率は2.3%、ユーロ圏は1.7%、中国は6.6%、日本は1.2%となっており先進国でも一定の成長がみられる。一方、米国経済の動向、中国経済の動向等、さまざまな下振れリスクがあるため、不確実性は高まっているといえる。

世界経済トピックス:米国経済の行方

米国商務省の発表によると、米国の1〜3月期のGDP成長率は前期比1.2%増となった(改定値ベース)。米国経済の行方を大きく左右するとみられるのがトランプ大統領の発言である。これまで、環太平洋経済連携協定(以下、「TPP」という)離脱表明、気候変動に対する国際的な取り組みであるパリ協定離脱表明のほか、製造業の米国回帰を促す等「アメリカファースト」を推進してきている。このような取り組みにより製造業の米国回帰が起き、工場新設等により国内失業率が低下すると、短期的には国内消費は拡大が見込まれる。国内消費増は米国で生産・販売を行う企業にとっては好材料となるであろう。

一方、米国回帰は米国への輸出へ制約が設けられる可能性も示唆しており、米国への輸出を行う日本企業にとっては予断を許さない状況である。

世界経済トピックス:欧州経済の行方

平成28年6月23日、英国においてEU離脱を問う国民投票が行われ、離脱を求める票が過半数を占める結果となった。その後、EU加盟国においてEU加盟の是非について問われることとなり、各国の選挙の大きな論点のひとつとなっている。

直近では、オランダ総選挙、フランス大統領選挙やイギリスの総選挙において論点となった。オランダやフランスでは、政権の交代までに発展しなかったものの、イギリス総選挙では与党保守党が過半数割れ。英国のEU離脱(Brexit)は今後の欧州経済の行方を左右するものになるであろう。

なお、実際の英国のEU離脱の手続きは、2017年6月から開始。今後の動向が注目される。

日本経済概況:4期連続プラス成長

平成29年1〜3月期の実質GDP(国内総生産)は、前期比0.3%増、年率換算では1.0%増となった(平成29年6月8日公表の二次速報値)。

日本銀行が平成29年4月に公表した「経済・物価情勢の展望」では、「わが国経済は、海外経済の成長率が緩やかに高まるもとで、きわめて緩和的な金融環境と政府の大型経済対策の効果を背景に、2018 年度までの期間を中心に、景気の拡大が続き、潜在成長率を上回る成長を維持するとみられる。2019 年度は、設備投資の循環的な減速に加え、消費税率引き上げの影響もあって、成長ペースは鈍化するものの、景気拡大が続くと見込まれ」という認識がなされている。また、同公表の政策委員の大勢見通しでは、平成29年度の実質GDP見通しが+1.4〜+1.6%(中央値は1.6%)とされ、平成29年1月に比して、高い成長率見通しとなった。

日本経済トピックス:働き方改革に関する取組み

平成28年9月に安倍首相主導のもと総理大臣官邸で第1回「働き方改革実現会議」が開催された後、これまで複数回にわたり「働き方改革実現会議」が開催されている。

平成29年3月28日に行われた第10回「働き方改革実現会議」では、働き方改革実行計画が決定され、個別項目に対する工程表が開示された。当該工程表の中では、現状や方向性の他、今後10年程度のスケジュールや指標が明示されており、今後の働き方改革の各種施策はこの工程表に沿って行われると想定される。

工程表にあわせて、「同一労働同一賃金ガイドライン案」や「時間外労働の上限規制等に関する労使合意」についても公表。今後、具体的な法律等が整備されることとなるが、時間外労働の上限規制については、「原則月45時間、年360時間」、やむを得ない特定の場合の上限については、

年間の時間外労働は月平均60時間(年720時間)以内とする
休日労働を含んで、2ヵ月ないし6ヵ月平均は80時間以内とする
休日労働を含んで、単月は100時間を基準値とする
月45時間を超える時間外労働は年半分を超えないこととする

と設定され、これらは、労働基準法に明記される見通し。さらに、これらの上限規制は、罰則付きで実効性を担保することとなるため、時間外労働が多い企業では留意すべきである。

(株式会社 日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 粟田 輝)