経済概況と企業経営への影響

世界経済概況:世界経済の成長予想における当面のリスクはほぼ均衡状態にある

国際通貨基金(IMF)は、2018年4月に世界経済見通し(2018年4月版)を発表した。この見通しによると、2017年の世界のGDP成長率は3.8%、そして2018年は3.9%、2019年も3.9%になるとされている。

個別の国・エリアでみると、米国の2017年GDP成長率は2.3%、ユーロ圏は2.3%、中国は6.9%、日本は1.7%となっており先進国でも一定の成長がみられる。一方、内向き政策への傾倒や各種地政学的リスクなどは依然として存在しており、中期的にはさまざまな下振れリスクがあるといえる。

世界経済トピックス:米国経済の行方

米国商務省の発表によると、米国の2018年1〜3月期のGDP成長率は年率換算前期比2.2%増となった。2018年から施行となった1.5兆ドル規模の減税政策は景気を後押しするものとみられる。

2018年3月には、米国は安全保障上の脅威に対応するためとして鉄鋼・アルミニウムの輸入制限を発動。各国は報復措置として報復関税を課す方針を表明している。これにより、米国経済が低迷する可能性があり余談を許さない状況にある。なお、2018年11月には中間選挙が実施される予定。今後は選挙を意識した短期的な成果が志向される可能性がある。

世界経済トピックス:欧州経済の行方

2016年6月23日、英国においてEU離脱を問う国民投票が行われ、離脱を求める票が過半数を占める結果となった。その後、EU加盟国においてEU加盟の是非について問われることとなり、各国の選挙の大きな論点のひとつとなっている。

また、2018年5月には、EU域内の個人情報をEU域外に持ち出すこと等を制限する法律(「GDPR」:EU General Data Protection Regulation)が施行された。本法律は、日本の個人情報保護法より広い範囲で制限がかかっている部分が多いため、留意が必要である。

日本経済概況:景気は拡大基調で推移

2018年1〜3月期の実質GDP(国内総生産)は、前期比0.2%減、年率換算では0.6%減となった(2018年6月8日公表の2次速報値)。

日本銀行が2018年4月に公表した「経済・物価情勢の展望」では、「日本経済の先行きを展望すると、2018 年度は海外経済が着実な成長を続けるもとで、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。2019 年度から 2020 年度にかけては、設備投資の循環的な減速や消費税率引き上げの影響を背景に、成長ペースは鈍化するものの、外需に支えられて、景気の拡大基調が続くと見込まれる」という認識がなされている。また、同公表の政策委員の大勢見通しでは、2018年度の実質GDP見通しが+1.4〜+1.7%(中央値は1.6%)とされ、2018年1月に比して、高い成長率見通しとなった。

2025年問題による中小企業の後継者不足

2025年問題とは、わが国では2025年には団塊の世代が75歳を超える後期高齢者となり、国民の約2割が75歳以上、また約3割が65歳以上という「超高齢者社会」を迎えるということである。

さらに、これを中小企業の経営者に照らし合わせたとき、2025年には6割以上が70歳を超え、経済産業省の試算では、このうち現時点で後継者が決まっていない企業が127万社あるということである。また、後継者不足により休業・廃業・解散を余儀なくされる企業の半数は経常損益が黒字であり、このまま廃業が増加していけば、2025年までの累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDP(国内総生産)が失われる可能性があるということである。

成長力のある中小企業の廃業等は、わが国の産業基盤を弱めかねず、経済の活性化のためにも、後継者の確保や早めの事業承継をしやすくする必要がある。地域金融機関としては、商工会議所や支援センターなどと連携を深めて問題解決のための支援体制の強化に尽力する必要がある。

日本経済トピックス:働き方改革に関する取組み

2016年9月に安倍首相主導のもと総理大臣官邸で第1回「働き方改革実現会議」が開催された後、これまで複数回にわたり「働き方改革実現会議」が開催されてきた。

2018年6月29日には、働き方改革関連法案が可決成立した。これにより、残業時間の上限規制が大企業においては2019年4月、中小企業においては2020年4月より導入され、同一労働同一賃金は、大企業においては2020年4月、中小企業においては2021年4月より導入される。また、年収1,075万円以上の一部専門職が対象となる脱時間給制度は19年4月から導入となった。

働き方改革関連法の成立を契機に従業員にとってよい働き方を提示できる可能性があるとも考えられるため、特に経営者や人事担当者は、早期に制度の趣旨を理解した上で対応を進めていく必要がある。

(株式会社 日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 高津 輝章)