製造業ガイダンス

業界総括

製造業全体としての業績は回復傾向。競争力強化のため、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の産業活用に向けた取組みが加速している。中小企業各社には政府等の支援施策を活用しつつ、IoTへの的確な投資が求められる。

現状の業界動向

(1)直近の業績は回復傾向

最新の財務省『法人企業統計』によると、直近1年(2017年4月~2018年3月)の製造業の売上高は前年同期比103.6%、経常利益は同117.0%。石油・石炭を除く全業種で増益となった。2016年の落ち込みから回復傾向にある。

(2)IoTの産業活用に向けた取組みが加速

毎年10月に幕張メッセで開催されるアジア最大の「IT・エレクトロニクスの国際展示会:シーテック(CEATEC)」は、2016年から「CPS(Cyber Physical System:サイバーフィジカルシステム)/IoT」の展示会として生まれ変わった。それに伴い2017年の出展者数は667社/団体(2016年:648社/団体、2015年:531社/団体)と大幅に増加、327社/団体が新規出展となった。各社のIoTに関する取組みが加速している様子がうかがえる。

日本としては国際連携の強化も進む。安倍首相は2017年3月末に独国ハノーバーで開催された欧州最大のIT(情報技術)見本市「CeBIT(セビット)」において、日本が目指す産業の在り方として「人、機械、技術等がつながることにより価値創出を目指す“Connected Industries”」を提唱。同見本市で、日独両国は、前年(2016年4月末)の日独経済フォーラムの中で両国が交わした、IoTの産業活用に関するMOU(Memorandum of Understanding:覚書)を拡大した「ハノーバー宣言」を採択し、この中で“Connected Industries”を協力して進めていく旨を宣言している。

「ハノーバー宣言」の協力項目の一つに「中小企業支援」がある。というのも、IoTの産業活用は中小企業の実践なくして実現困難であるからだ。つまり、中小企業にとっては、いち早く体制を整えることがビジネス機会の獲得に繋がるだろう。政府が2018年度の税制改正大綱に「IoT投資減税」を盛り込むなど、政府・各団体が積極的に支援を推進している今こそ、IoTへの的確な投資が求められる。

(3)問われるコーポレートガバナンス

近年、東芝・日産自動車・神戸製鋼所など日本を代表するものづくり企業の不正が相次いでいる。原因の一つとして、グローバルでの競争環境が激化する中で、目先の利益を追求した結果との見方もある。今一度、長期的な企業価値向上のために、各社はコーポレートガバナンスに誠実に取組むべきである。

今後(2018年11月頃まで)の見通し

(1)設備投資は維持。投資の目的が量から質へ

前掲『法人企業統計』によると、直近1年(2017年4月~2018年3月)の製造業の設備投資額は前年同期比101.1%である。『設備投資計画調査(日本政策投資銀行)』によると、設備投資の動機を「新製品・製品高度化、合理化・省力化、研究開発」とする割合が2008年度の30.5%から2017年度には36.2%(計画ベース)まで増加している。一方で、「能力増強」を動機とする割合は40.4%(2008年度)から21.4%(2017年度、計画ベース)へと大幅に減少している。投資の目的が単なる増産から“質”を高める方向へと変わっている。IoTなどへの投資を背景に、この傾向は今後も続くと考えられる。

(2)海外経済のリスクへの対応

多くの企業がグローバルに事業を展開する製造業において、米国経済・中国経済・EU経済の行方は各社の業績に大きな影響を与える。例えば、トランプ大統領の要請を受けてトヨタ自動車が米国への巨額投資を宣言したことは記憶に新しい。また、同様に北朝鮮に対するリスクも十分に考慮しておく必要がある。各種リスクに対応できるように、事業のポートフォリオを構築しておくことが重要になる。

(3)消費税増税への対応

安倍首相は2019年10月の消費税増税(8%→10%)を予定通りに実施することを強調している。これに伴い、増税前の駆け込み需要と増税後の買い控えによる売上減少が想定される。過去の消費税増税を振り返ると、特に、消費動向が反映されやすい食品製造業で売上および経常利益の大きな減少が見られる。製造業各社は前回の増税から学び、先んじて対策を講じておく必要がある。

取引深耕のポイント

他社が容易にまねできない独自技術を持っているか。
自社の強みをどのようにアピールしているか。
環境関連や高齢者向け商品など時流に合った商材にどのように取り組んでいるか。
海外情勢に対して、どのような対応を考えているか。
適性に応じて、女性や海外人材など多様な人材の活用を推進しているか。
為替相場の動向が当該企業にどのような影響を及ぼすか。
今後、震災などが発生しても、複数の仕入先のルートが確保されているなど、部品供給網(サプライチェーン)が寸断されないような対策を講じているか。
法令遵守に対して、経営者はどのような方針を示しているか。
(株式会社 日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 コンサルタント 小林 幹基)