建設業ガイダンス

業界総括

公共事業は安定的に推移する見通しであるものの、民間住宅投資、特に貸家着工が減少の兆し。持家・分譲戸建は、消費税増税前の駆け込み需要に期待。短期的にも中長期的にも、人材不足への対応・生産性向上が最大の課題。受注側、発注側双方で、生産性向上への取組が進展。企業間の合従連衡も増加の兆しあり。人材確保・成長産業への投資を拡大し、2020年以降の展開を見据える。中小事業者においても、中長期の展望が問われている。

現状の業界動向

(1)2018年の建設投資は前年と同程度の水準となる見込み

建設経済研究所の『建設投資見通し』(2018年1月)によると、2018年度の建設投資は前年度比▲0.0%の約53.39兆円と予測。政府建設投資が同+0.1%、民間住宅建設投資は消費税増税の駆け込み需要により持家・分譲戸建は着工増が見込まれる一方、貸家や分譲マンションの着工戸数が次第に減少に向かっていくと想定されることから同+0.6%、民間非住宅建設投資は、建築着工面積が微減すると見込まれることから、同▲0.8%となる見込み。2018年度は全体として、前年度比でほぼ横ばいとなる想定となっている。

(2)2017年の受注高は減少、特に下請受注高の減少が顕著

『建設工事受注動態統計調査報告』(国土交通省)によると、2017年10〜12月の受注高は前年同期比▲1.2%の20.6兆円。2017年1~3月期以降、4四半期連続での前年割れ。元請企業の受注高は、公共機関からの受注が同+6.8%、民間等からの受注が同+1.2%と増加したため、全体として同+2.7%となった。一方、下請企業受注高は、同▲8.6%と大きく減少。下請受注高は3四半期連続の減少となり、苦しい市場環境が続いている。

(3)労働力確保のための処遇改善に向け、「週休2日モデル」に取り組む動き

『一般職業紹介状況』(厚生労働省)によると、2017年の公共職業紹介所における建設技術者の有効求人倍率は5.61倍となり、過去最高の数値。特に、12月には単月での過去最大値となる10.68倍となっており、2018年も引き続き、人材需給のひっ迫が想定される。この状況を受け、国土交通省は働き方改革の一環として、2015年度以降「週休2日」の工事発注を拡大している。都道府県発注の工事においても、「週休2日モデル」を検討・実施する動きが広がる。5月時点で、20団体がモデル工事を実施、検討している団体も17団体存在。2017年度分の件数ベースでは、国交省分で約2,000件、都道府県合計で956件に上る見込み。モデル工事では、ワークライフバランスの観点から評価する声があると同時に、「当面は4週8休のモデル工事や評価項目の設定などで試行」「日給制技能者の処遇改善をはじめ賃金の問題や生産性向上、施工時期の平準化などの課題があり、さまざまな観点から検討する必要がある」(日刊建設工業新聞)などの指摘もあり。

(4)業界内外の合従連衡が増加傾向、人材不足の解消と成長領域投資拡大

2017年11月、熊谷組が住友林業との資本業務提携を発表。ゼネコンとハウスメーカーとの大型提携・は、フジタと大和ハウス工業に続くもの。また、9月に、JESCOホールディングスが菅谷電気工事を完全子会社化、アイナボホールディングスが今村タイル・今村住宅機器と資本業務提携、5月には高砂熱学工業がヤマトと業務提携を発表する等、業界内におけるM&A・資本業務提携等が増加傾向。建設人材不足に対応する形での人材の囲い込み、中長期的な成長領域における投資を狙う。

今後(2018年4月頃まで)の見通し

(1)国土交通省2018年度予算、働き方改革推進・公共工事効率化等に重点

国土交通省によると、2018年度概算要求において、「新しい日本のための優先課題推進枠」を活用し、建設業における働き方改革の推進予算を盛り込むことで検討中。国土交通省事業において試行している週休2日を前提とした適切な工期設定、施工時期の平準化、施工のICT化等を民間工事にも浸透するよう、民間発注者等への働きかけを実施予定。また、ストック効果を重視した社会資本整備にも重点を置く。

(2)貸家着工が横ばいへ、持家・分譲は消費税増税前の駆け込み需要取り込みの動きに

マイナス金利政策、及び相続税の節税対策等を要因として増加してきた貸家着工は、2017年に入ってほぼ横ばいで推移。季節調整済年率換算値で、2016年度後半は年間44万戸ペースで着工があったものの、2017年度は6月以降、40~42万戸ペースで推移しており、対前年比での減少が続いている。一方、2019年10月には消費税増税が予定されており、駆け込み需要を見据えた動きが次第に活発になってくるであろう。

(3)生産性向上への取組みが強化

日本建設業連合会は2016年4月、建設業界と建設企業が一丸となって、生産性向上に取組むための指針として、『生産性向上推進要綱』を策定。「産業構造と生産方式」「土木」「建築」の3分野についての生産性向上の取組みをまとめた。当面5年程度における工程や目指すべき目標、進捗状況の検証方法等を列挙したアクションプログラムとなっている。また、建設現場の生産性向上に向けて、測量・設計から、施工、さらに管理にいたる全プロセスの情報化を進める「i-Construction」の取組みが進む。発注者側でも取組みが進む。2017年6月、国交省は、建設工事の発注機関で構成する「国土交通省公共工事等発注機関連絡会」の初会合を開催。工事品質の向上や担い手確保の施策に加え、生産性向上や働き方改革に関する取り組みについて情報を共有した。各発注機関で参考にしてもらうことを目的としており、連絡会にも民間を含む発注機関に幅広く参加を促す意向。

取引深耕のポイント

新卒者の採用をどのように考えているか。
法令遵守や社会保険への加入に対して、経営者はどのような方針を示しているか。
適性に応じて、女性や海外人材など多様な人材の活用を推進しているか。
アルバイトやパートの維持や確保にどのような策があるか。
クレーム対処が体系化されているか。
インフラ工事、エレベーター改修工事、特定天井など、今後発展が見込める工事を得意としているか。
需要が増加している高度経済成長期に建設された公共設備などへの改修工事が得意か。
BCPの取組みをしているか。
生産性向上・情報化に向けた取組みを推進しているか。
東京五輪や政府の成長戦略に関連してどのような商機があるか。
(株式会社 日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 田中 靖記)