建設業ガイダンス

業界総括

政府建設投資・民間投資ともに、2018年度は前年度と同程度の水準となる見通し。民間住宅投資、特に貸家着工が減少の兆し。持家・分譲戸建は、消費税増税前の駆け込み需要に期待。短期的にも中長期的にも、人材不足への対応・生産性向上が最大の課題。受注側、発注側双方で、生産性向上への取組が進展。国は、2019年の建設業法改正案国会提出を念頭に、多重下請け抑制等に関する法制化を進める。企業間の合従連衡も増加の兆しあり。人材確保・成長産業への投資を拡大し、2020年以降の展開を見据える。中小事業者においても、中長期の展望が問われている。

現状の業界動向

(1)2018年の建設投資は政府・民間ともに前年度と同程度となる見通し

建設経済研究所の『建設投資見通し』(2018年4月)によると、2018年度の建設投資は前年度比+0.1%の約53.86兆円と予測。政府建設投資が同+0.1%、民間住宅建設投資は同+1.3%、民間非住宅建設投資は同▲0.2%となる見通し。総じて、前年度と同程度の水準となる。住宅着工については、持家・分譲住宅は消費税増税の駆け込み需要により持家・分譲戸建は着工増が見込まれる。一方、貸家は相続税節税対策による着工が一服し、分譲マンションは販売価格と在庫率の高止まり状態や販売適地の減少による影響が続くことから、着工減となる見込み。民間非住宅投資については、鉄道・通信・ガスなど土木インフラ系企業の設備投資が堅調であった2017年度とほぼ同水準を見込んでいる。

(2)2017年の受注高は減少、特に下請受注高の減少が顕著

『建設工事受注動態統計調査報告』(国土交通省)によると、2017年度の受注高は前年同期比▲3.1%の83.3兆円。元請企業の受注高は、同▲0.7%と微減であったものの、下請企業受注高が同▲8.1%と大幅に減少しており、下請企業にとっては苦しい市場環境が続いている。なお、元請企業受注高のうち、公共機関からの受注は同▲2.8%と減少した一方、民間等からの受注は同+0.2%とほぼ横ばいで推移した。公共工事に依存している企業にとっても足元の状況は厳しい。

(3)業界内外の合従連衡が増加傾向、人材不足の解消と成長領域投資拡大

2017年11月、熊谷組が住友林業との資本業務提携を発表。ゼネコンとハウスメーカーとの大型提携は、フジタと大和ハウス工業に続くもの。また、9月に、JESCOホールディングスが菅谷電気工事を完全子会社化、アイナボホールディングスが今村タイル・今村住宅機器と資本業務提携、5月には高砂熱学工業がヤマトと業務提携を発表する等、業界内におけるM&A・資本業務提携等が増加傾向。建設人材不足に対応する形での人材の囲い込み、中長期的な成長領域における投資拡大を狙う。

(4)問われるコンプライアンスの在り方。司法判断に注目が集まる

JR東海が発注したリニア中央新幹線の談合疑惑をめぐる捜査が2018年3月に終結。大成建設、大林組、鹿島、清水建設の4社及び大成建設、鹿島の土木部門幹部が独占禁止法違反で起訴された。また、農水省東北農政局発注の土木工事を巡る談合疑惑で、公正取引委員会は6月、独占禁止法違反のフジタに再発防止を求める排除措置命令を出した。とりわけリニア中央新幹線工事においては、談合にあたるとされた各社の行為についての司法判断を待つ必要があるものの、各社は独自にコンプライアンス体制の見直しに動いている。今後の営業活動に大きく影響を与える可能性があるため、動向に注視が必要。

今後(2018年11月頃まで)の見通し

(1)国土交通省、多重下請け抑制に向けた制度創出を検討

国土交通省中央建設業審議会・社会資本整備審議会基本問題小委員会は、6月、長時間労働の是正、処遇改善、生産性向上、地域建設業の持続性確保等に向けた中間とりまとめを公表。多重下請け抑制の方策として、「専門工事共同施工制度(仮称)」の創設を検討。専門性の高い工事を複数の企業で担当する場合に、中核となる1社だけが主任技術者を置くだけですむようにする。2019年の通常国会での建設業法改正案を提出する見込みであり、今後の検討に注目が集まる。

(2)働き方改革関連法案成立、施行に向けた体制整備が急務

「働き方改革関連法」が6月29日の参院本会議で可決、成立。全業種に時間外労働の罰則付き上限規制を導入し、19年4月1日(中小企業は20年4月1日)から施行。これまで対象外だった建設業への規制適用は工事(「土木、建築、その他工作物の建設、改造、保持、修理、変更、破壊、解体またはその準備の事業」)を担当する社員に限定して19年4月から5年間猶予となる一方、設計や調査など業務を担当する社員は19年4月からの適用となるため、各社内での人材確保・諸規定等の体制整備が急務となる。

(3)業界の給与水準は上昇、人材需要は活発も、求職者数は減少傾向が続く

厚生労働省「毎月勤労統計調査平成29年分(確報)」によると、建設業に従事する常用労働者の平均月額現金給与総額(賞与等含む、税引前)は40万9,353円。2012年度以降、5年連続で上昇。また、2018年4月の公共職業安定所(ハローワーク)の建設業新規求人数は、21カ月連続で、建築・土木・測量技術者(パート除く)の有効求人倍率は、35カ月連続で前年同月を上回る状況が続く。一方、有効求職者数は年間を通して前年割れが続いており、今後も人材確保が困難な状況は継続する見通し。

取引深耕のポイント

新卒者の採用をどのように考えているか。
法令遵守や社会保険への加入に対して、経営者はどのような方針を示しているか。
適性に応じて、女性や海外人材など多様な人材の活用を推進しているか。
アルバイトやパートの維持や確保にどのような策があるか。
クレーム対処が体系化されているか。
インフラ工事、エレベーター改修工事、特定天井など、今後発展が見込める工事を得意としているか。
需要が増加している高度経済成長期に建設された公共設備などへの改修工事が得意か。
BCPの取組みをしているか。
生産性向上・情報化に向けた取組みを推進しているか。
東京五輪や政府の成長戦略に関連してどのような商機があるか。
(株式会社 日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 田中 靖記)