建設業ガイダンス

業界総括

公共事業は横ばいで推移しているものの、民間住宅投資、特に貸家着工が減少の兆し。今後の動向に注視する必要あり。短期的にも中長期的にも、人材不足への対応・生産性向上が最大の課題。受注側、発注側双方で、生産性向上への取組が進展。大手ゼネコンは好業績を背景に研究開発投資を拡大しており、2020年以降の展開を見据える。中小事業者においても、中長期の展望が問われている。

現状の業界動向

(1)民間投資は横ばいで推移するものの、政府投資が減少する見込み

建設経済研究所『建設投資見通し』(平成29年4月)によると、平成29年度の建設投資は前年度比▲1.0%の約51.65兆円と予測。政府建設投資が同▲0.8%、民間住宅建設投資は貸家の着工戸数が次第に減少に向かっていくと想定されることから同▲1.2%、民間非住宅建設投資も同▲1.2%となる見込み。1月時点の予測に比べて若干下振れしている。民間住宅投資における貸家の着工戸数の減少が響くと予測されている。

(2)平成29年に入り、受注高は減少傾向。民間等からの受注減少が影響

国土交通省『建設工事受注動態統計調査報告』によると、平成29年1〜3月の受注高は前年同期比▲1.8%の22.5兆円と減少。元請企業の受注高は、公共機関からの受注が同+1.0%と増加したものの、民間等からの受注が同▲1.0%となったため、全体として同▲0.4%の微減。下請企業受注高も、同▲4.9%と大きく減少した。4月の受注高(速報値)は、合計で同▲4.6%、下請受注高は同▲11.6%と、減少幅が拡大している。

(3)労働力確保のための処遇改善に向け、「週休2日モデル」に取り組む動き

国土交通省は働き方改革の一環として、17年度に「週休2日」の工事発注を拡大している。都道府県発注の工事においても、「週休2日モデル」を検討・実施する動きが広がる。5月時点で、20団体がモデル工事を実施、検討している団体も17団体存在する。平成29年度分の件数ベースでは、国交省分で約2,000件、都道府県合計で956件に上る見込み。モデル工事では、ワークライフバランスの観点から評価する声があると同時に、「当面は4週8休のモデル工事や評価項目の設定などで試行」「日給制技能者の処遇改善をはじめ賃金の問題や生産性向上、施工時期の平準化などの課題があり、さまざまな観点から検討する必要がある」(日刊建設工業新聞)などの指摘もあり。受注者・発注者が協力した体制構築が求められる。

(4)研究開発投資が活発化、中長期テーマに重点

一般社団法人日本建設業連合会『平成28年度建設業における研究開発に関するアンケート調査結果報告書』(平成29年3月公表)によると、会員企業52社へのアンケート調査の結果として、中長期の研究開発テーマに割く研究開発投資の比率が35%となった。平成27年度の34%から、1ポイントの増加。短期(2年以内)の研究開発テーマに割く比率(65%)との差が縮まっている。大林組が定款を一部改定し「宇宙開発」を追加したり、前田建設工業がオープンイノベーションを見据えた新技術研究所の開設を発表したりするなど、大手企業は好業績を背景に「未来への投資」を活発化させており、中長期の展望の重要性が高まっている。

今後(平成29年11月頃まで)の見通し

(1)平成29年度予算成立、公共事業関係費は約6兆円規模に

平成29年3月27日に、平成29年度予算が成立。土木分野が中心となる「公共事業関係費」は5兆9,763億円と、平成28年度当初予算比+26億円とほぼ横ばいの水準。豪⾬・台⾵災害等を踏まえた防災・減災対策や、民間投資を誘発し、日本の成長力を高める事業などへの重点化を推進するとしている。また、国庫債務負担⾏為の活⽤により、公共工事の施工時期を平準化し、建設現場の⽣産性を向上する意向。「農業農村」「防災・安全」「道路」分野の予算が、平成28年度当初予算費で増加。

(2)貸家建設が過熱、引き締めの動きあり動向に要注視

マイナス金利政策、及び相続税の節税対策、建設コストの減少等を要因として、貸家着工は平成29年に入ってからも継続して増加。年間40万戸を上回るペースで着工が進む。また、個人が建設する賃貸住宅への地方銀行の融資残高が、平成29年3月末時点で前年比+7.2%の13.8兆円に。日銀による平成11年の統計開始以降で最大。金融庁は地銀に対する監視を強化。調整期間を経て、需給バランスが緩くなっている地方から着工が減少する可能性あり。貸家に依存している企業においては注視が必要。

(3)生産性向上への取組みが強化

日本建設業連合会は平成28年4月、建設業界と建設企業が一丸となって、生産性向上に取組むための指針として、「生産性向上推進要綱」を策定。『産業構造と生産方式』『土木』『建築』の3分野についての生産性向上の取組みをまとめた。当面5年程度における工程や目指すべき目標、進捗状況の検証方法等を列挙したアクションプログラムとなっている。

また、建設現場の生産性向上に向けて、測量・設計から、施工、さらに管理にいたる全プロセスの情報化を進める「i-Construction」の取組みが進む。発注者側でも取組みが進む。

平成29年6月、国交省は、建設工事の発注機関で構成する「国土交通省公共工事等発注機関連絡会」の初会合を開催。工事品質の向上や担い手確保の施策に加え、生産性向上や働き方改革に関する取り組みについて情報を共有した。各発注機関で参考にしてしてもらうことを目的としており、連絡会にも民間を含む発注機関に幅広く参加を促す意向。

取引深耕のポイント

新卒者の採用をどのように考えているか。
法令遵守や社会保険への加入に対して、経営者はどのような方針を示しているか。
適性に応じて、女性や海外人材など多様な人材の活用を推進しているか。
アルバイトやパートの維持や確保にどのような策があるか。
クレーム対処が体系化されているか。
インフラ工事、エレベーター改修工事、特定天井など、今後発展が見込める工事を得意としているか。
需要が増加している高度経済成長期に建設された公共設備などへの改修工事が得意か。
BCPの取組みをしているか。
生産性向上・情報化に向けた取組みを推進しているか。
東京五輪や政府の成長戦略に関連してどのような商機があるか。
(株式会社 日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 田中 靖記)