コロナ禍でも好調なビジネス

美容パック卸売業
卸売

消毒液の販売に着手

A社は、主に美容室向けに美容パックの卸売りをしている。同社の社長は道路工事業から経営を始めたが、他の分野での経営にも以前から意欲が高く、他に飲食店やリサイクル関連の事業も手掛ける。

このような中で、日本国内で新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、マスクに代表される一部商品の需要が急激に増加した。

そんな折、知り合いの中国人経営者から「中国で生産している手指用の消毒液を売ってみないか」と持ち掛けられた。仕入先は知り合いの中国人経営者から紹介された中国企業で、条件面はA社とその中国企業間で直接交渉することになった。初めての取引ということもあり輸入元の中国企業から全額前払いを要求され、結果としてその条件にて取引を開始することになった。

運転資金の資金需要が想定

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中国企業より手指用の消毒液の輸入販売を手掛けることに伴い、A社には運転資金の資金需要が想定される。

まずは所要運転資金の計算式を図表で確認しよう。この図は、立替期間(回転期間)から所要運転資金を求める計算式である。月商が変わらないとして立替期間が長くなると所要運転資金は増加し、立替期間が短くなると所要運転資金は減少する。

A社の美容パックの仕入条件は、中国から日本に製品が到着後の支払である。これに対して、今回の消毒液の支払条件は全額前払いだ。消毒液の部分の買掛債務回転期間はゼロということになる。つまり、A社の買掛債務回転期間は消毒液の取扱開始に伴い現在よりも全体として短縮することになる。これは先ほどの図の計算式から立替期間が長期化することとなり、このため所要運転資金が増加する見込みとなる。消毒液の取扱いにより、A社には運転資金需要の発生が見込まれる。

返済代金は消毒液の販売代金、融資実行後は定期的な報告を求める

今回、A社に生じる運転資金需要の要因は消毒液の取扱いを始めることになる。ということは、返済財源はこの消毒液の販売代金であり、消毒液の販売見込みが運転資金融資の返済可能性のポイントとなる。

新型コロナウイルス感染症の影響により消毒液への需要は高まっているが、既存メーカーの増産や他のメーカーの新規参入も当然予想されるところであり、需要が高いといってもそれが何の苦労もなく販売に繋がるわけではない。

品質の確認とともに、どのような販売計画を立てているのかの検証が必要となる。

また、融資実行後は販売実績をA社から定期的に報告を求め、当初の計画対比実績の確認も当然必要になってくる。