コロナ禍でも好調なビジネス
- 印刷業
- 製造
コロナ禍でテイクアウト用チラシの需要増
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L社は、町の印刷業者である。同社は専ら紙印刷が主体であったが、ペーパーレスなどの影響もあり構造的な不況に陥り年々売上も低下し、数年後には廃業を覚悟していた。
従業員は3人、勤務歴も長い古参の社員である。従業員の今後の生活のため、働き続けられるように経営者自らが同業他社などに面倒を見てくれないかなどと依頼に動いていたが、同業他社の経営状況も厳しく、なかなか再就職は進まなかった。
そんな最中のコロナ禍である。ますます経済は止まり、数年後の考えていた廃業はもう目前のことだとL社の経営者は考えた。
ところが、思わぬ状況になった。近くの商店街の飲食店を中心にチラシ印刷の依頼が増加してきたのである。依頼主に理由を聞くと、テイクアウトに力を入れるためにそのPR用のチラシの印刷だった。
依頼してくる飲食店は一つに留まらず、次から次へと依頼が舞い込んできた。
印刷機修理の需要増も事後管理が難しい案件
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ところがL社には、図表に示した自社設備の問題を抱えており、印刷機械の修理費用のための資金需要が発生した。想定外の売上増加の機会であり、L社は、この機会を生かしたいと考えた。
金融機関としては何とか支援をしたい気持ちはあるものの、長らくの業績不振でL社の財務状況は債務超過の状態に陥っており、容易に支援に乗り出すことは難しい。
今回の売上増加の要因はテイクアウト向けのチラシ印刷の依頼であり、この先も継続的に受注が続くかどうか非常に悩ましい。一時的な受注増加に終わる危険性もある。
これでは、修理費用を融資してもきちんと最後まで回収できるのかどうかがどうしても気になり、事後管理が難しい案件だ。殺到している受注をこなすには3台の印刷機械を再稼働させる必要があるようだが、これでは修理費用が嵩む。L社には、修理費用をすべて捻出できる資金余力は残っていない。
金融機関は、結果として、1台のみの修理費用の支援をおこなった。1台の費用であれば金額も抑えられ、比較的短期間で回収できる計算になる。L社も現在の1台を併せて2台体制でフル稼働させ、受注を何とか対応していけるとの見通しを立ててもらった。
コロナ禍により、思わぬ売上増加の機会が到来したわけだが、これが長続きするかどうか、判断が難しい案件だ。