景気予測お天気マーク
このシグナルは、現状から今後6ヵ月間の見通しを短評。
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年間商品販売額 |
事業所数 |
従業者数 |
2018年 |
6,443,416百万円 |
225 |
72,916人 |
2019年 |
6,297,864百万円 |
213 |
68,774人 |
2020年 |
4,693,751百万円 |
201 |
64,156人 |
資料:経済産業省『2020年商業動態統計年報 第3部 百貨店・スーパー販売)2021年6月公表(百貨店)
1.近年の傾向として、売場拡張や改装など集客力のある大都市圏の主力店舗への積極的投資を行う一方、地方では不採算店などの統廃合が加速している。2019年においても、地方百貨店を中心に16店舗が閉店している。2020年1月には、山形県の老舗、大沼山形が自己破産に至った。なお、新型コロナウイルス問題の長期化を見据え、各社とも融資枠の設定など資金繰りを急いでいる、財務体質の弱い会社の淘汰が加速される可能性にも留意したい。
2.百貨店業界は近年インバウンド需要、とりわけ中国人観光客の爆買いの恩恵を受け売上を伸ばしてきた。だが、新型コロナウイルス対策として、我が国はほぼ全世界の国を対象に入国制限を実施しており、外国人来店者数は激減。2020年売上は前年比▲25.5%の大幅な落ち込みとなった。2021年は前年比5.8%増(百貨店協会速報)で回復基調にあるものの、コロナ禍前の水準への回復には時間がかかると想定される。
3.百貨店の従来のやり方を変える新たな潮流も広がっている。大手百貨店各社は、小型店を郊外の商業施設に出店し、顧客との接点強化や新規顧客層の拡大を図る動きがみられる。また、丸井のように消化仕入れをベースとした百貨店から、テナントを集積するショッピングセンター(SC)への転換を図り、収益を向上させている例もある。また同社は、オムニチャネル化にも注力し、ECサイトと実店舗の在庫連動、店舗受取サービスや靴の体験ストアなどで顧客満足度を上げ、成果をあげている。
1.百貨店の定義は法律上は不明確であり、経済産業省『商業動態統計年報』上では、以下の要件を満たすものを百貨店として扱っている。
2.総務省『日本標準産業分類』(2013年10月改定)の百貨店、総合スーパー(561)のうち、従業者50人以上で、売場面積が東京特別区及び政令指定都市で3,000㎡以上、その他の地域で1,500㎡以上の事業所。
1.明治37(1904)年、合名会社三井呉服店(現在の三越)の設立が日本の百貨店の始まりである。以降昭和前期にかけて、全国各地で百貨店が誕生していった。
2.戦後から高度成長期にかけて、大都市圏のターミナル駅に大手私鉄資本による百貨店の開業が相次いだ。その後、1990年代以降の長期にわたる不況、また、郊外型ショッピングセンターの出現による顧客流出など、百貨店業界は厳しい状況に直面し、店舗統廃合や閉鎖が進行した。
3.取扱商品が豊富であることから、競合も多岐にわたる。同業百貨店のほか、H&M・ユニクロ・FOREVER21・しまむらなどのファストファッション専門店、ティファニー・カルティエなど国外高級ブランドの直営店、コストコ・トイザらスなど地方都市に進出した海外資本の郊外型量販店・専門店、大型ショッピングモール、インターネット通販業者などが競合となる。ただしファストファッション専門店や家電量販店を百貨店のテナントとして導入し、集客強化や販管費削減に役立てる形態もある。
取扱商品は企業、店舗の規模によって異なるが、構成内容は次のようである。(2019年 日本百貨店協会統計)主な販売品目は、下記のとおりである。
・衣料品 29.3%
・食料品 27.7%
・雑貨(化粧品・貴金属ほか) 20.1%
・身の回り品 13.3%
店舗販売の他には以下の形態がある。
(1)外商
多額の購買が見込める個人・法人を対象に直接訪問して商品を販売する。定価から値引を行い、現金ではなく掛売で販売するケースが多い。売上拡大に直接役立つだけでなく、固定客の流出リスクを最小限にするメリットがある。
(2)通信販売
一般顧客向けにブランドイメージを活かした通信販売を行っていることも多い。ギフトカタログによる通販や、自社のホームページを活用したインターネット通販などがある。
(3)友の会
外商同様、顧客を優遇し、固定化する目的で導入されている。一般的には、顧客が一定の期間に毎月一定額を積み立て、満期になると積立額以上の商品券などに変えて顧客に返す。商品券は自店での買い物に活用できる仕組みになっているところが多い。
帝国データバンク『第64版全国企業財務諸表分析統計』2020年度・2021年11月発行(百貨店)によれば、売上に関する主な指標は次のとおりである。
1人当たり売上高 86,396千円
売上高増加率 ▲24.04%
前掲『第64版全国企業財務諸表分析統計』によれば、採算に関する主な指標は次のとおりである。
総資本経常利益率 ▲3.98%
売上高総利益率 23.83%
売上高営業利益率 ▲2.41%
売上高損益分岐点倍率 0.91倍
1.経営者は業界動向についてどのような分析をし、経営戦略に反映しているか。
2.売掛金債権状況はどうか、回収についてはどのような手段、手法をとっているか。
3.業界の実態把握は的確に行われているか、取引金融機関にタイムリーな情報提供をしているか。
4.商品の仕入先の内容と取引条件はどうなっているか。
5.中小店の場合には、競争力の低下による売上の不振から経営がジリ貧に陥ることがありがちなので、経営者が持つ、計数管理・商品政策・販売促進・労務管理・広告宣伝などに関する具体的な指導力を検討する。経営相談所などの支援を得て、経営者・幹部従業者との接触を深め、取引に結び付けることが望ましい。
6.顧客管理、商品(単品)管理の仕組みはどうなっているか。
顧客の組織化・特化を図っているか。商品構成・売れ筋商品の品揃えはどうか、また店構え・店内装飾・ムードづくりはどうか。
商品の仕入は製造卸売業者および問屋からの仕入が大部分であるが、支払条件は買掛期間最長1カ月程度で、90〜120日サイトの手形で決済されるので、長期買掛債務をもって資金繰りをつけている。
店舗改装資金などが主として発生する。店舗に対する設備投資に際しての借入申込受付に対しては、資金調達内訳、借入依存度、返済期間、返済方法、今後の売上予測に基づく純利益の計上額、減価償却費などにより十分返済できるかどうかを検討する。
商品構成が、その地域における客層や消費購買力にマッチしているかどうかを見極める。また、景気や気候に加えて催事などのイベント効果が売上に影響する部分も大きいだけに、百貨店の独自性を打ち出せる新しい要素が出てくるかどうかも、今後の業績推移を左右するポイントの1つとなる。
日本政策金融公庫 企業活力強化資金
各経済産業局、各都道府県、中小企業庁 経営革新支援事業
調査年 項目 |
2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
|
収益性 |
総資本経常利益率 |
0.71% |
0.18% |
▲3.98% |
売上高総利益率(粗利益率) |
23.98% |
23.47% |
23.83% |
|
売上高経常利益率 |
0.14% |
0.19% |
▲2.33% |
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売上高営業利益率 |
0.52% |
0.34% |
▲2.41% |
|
売上高金利負担率 |
0.44% |
0.44% |
0.63% |
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効率性 |
総資本回転率 |
1.98回 |
2.09回 |
1.61回 |
売上債権回転期間 |
0.48月 |
0.43月 |
0.49月 |
|
棚卸資産回転期間 |
0.61月 |
0.56月 |
0.62月 |
|
買入債務回転期間 |
0.86月 |
0.80月 |
0.94月 |
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安定性・流動性 |
自己資本比率 |
26.20% |
21.64% |
20.50% |
流動比率 |
85.21% |
69.66% |
68.37% |
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固定長期適合率 |
136.38% |
152.14% |
141.85% |
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成長性・生産性 |
売上高増加率 |
▲2.99% |
▲3.77% |
▲24.04% |
経常利益増加率 |
▲38.87% |
▲87.86% |
▲298.14% |
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1人当たり売上高 |
111,814千円 |
113,708千円 |
86,396千円 |
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採算性 |
売上高損益分岐点倍率 |
1.03倍 |
1.01倍 |
0.91倍 |
集計企業数 |
48社 |
43社 |
39社 |
資料:帝国データバンク『全国企業財務諸表分析統計(第62〜64版(2019〜2021年発行))』(百貨店)