1.相続税と養子縁組
相続税は超過累進税率で、法定相続人が法定相続分どおりに遺産を分割したものとみなして税金を計算します。したがって、法定相続人が多ければ多いほど各相続人の相続分が少なくなり、税率も低くなって税金が少なくて済みます。つまり、相続財産10億円を1人で相続するのと10人で相続するのとでは相続税額が大きく変わります。そこで、相続人を増やす手段が、法律上の親子となる養子縁組なのです。
2.養子縁組による節税効果
相続税の税構造をみてみましょう。図1は相続人2人の場合と3人の場合の相続税の図解です。2人のときと比べて3人の場合には、まず基礎控除が増えて課税財産が減少し、次に累進税率の適用が2人から3人へ増えることにより、総体の相続税が減少していることがわかります。
ただし、養子縁組による節税が行き過ぎないように、養子縁組の人数のうち、税金計算上は実子がいる場合は1人、実子のいない場合は2人までとされています。
3.財産分割の問題
養子縁組をする合理的理由があり、養子の心の問題もクリアできた。さて次に考えなければいけないのは財産分割の問題です。
図2のケースで説明しましょう。甲に相続が発生した場合の法定相続人は、本来であれば、乙、A、Bですが、ここに養子Cが加わります。そうしますとBの法定相続分が当初の4分の1から6分の1に減少し、AとCを合わせた法定相続分は当初の4分の1から3分の1(1/6+1/6)に増加します。このように税金も減る代わりに他の兄弟の法定相続分にも影響を与えますので、相続人や親族間での合意を得てから実行するようにしましょう。
図1
(注)アミ部分は税金
図2
※ なお、上記のケースの場合には孫養子として2割加算の対象となります。
(文責:
辻・本郷税理士法人 http://www.ht-tax.or.jp/)
関連項目→
- 相続にかかる税金
- 相続税の計算(その1)-法定相続人と基礎控除の計算-