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(3)求められる経営能力に変化
高度経済成長の時代には、中小企業の経営者の経営能力は、人柄に問題がなく、ある程度の常識や見識を備えていることと、ほぼ同義と見なされていた。いわゆる、社長は付き合い業と見なされていて、オーナー家の子息の後継者も、人当たりが良ければ、取引先や従業員と良好な関係を作れて、大概の場合は務まることが多かったようである。
しかしながら、高度経済成長が終わり、低成長時代が長期化していること、また、経済のグローバル化が急速に進展したことから、中小企業にも漫然と経営していることが許されない時代となり、経営者には、より高い経営能力が求められるようになった。
つまり、直接・間接を問わず、飛躍的に増えた海外との接点を活用すること、自社の製商品やサービスに少しでも付加価値を付ける工夫をすること等、単に前例を踏襲すること以上の能力や才覚が求められるようになったということである。
(4)経営者心理の減退
非上場のオーナー企業の場合、経営は子息が継ぐものという考えは、未だに根強くあるし、子息への承継も多いのも確かである。これは、金融機関から借入がある場合には、経営者は、債務保証や個人の資産を担保差し入れに求められるので、子息以外の他人に負担を求めるのは極めて難しいという事情が背景にあることが大きい。
しかしながら、前述のように経営環境が厳しさを増したことにより、将来の会社の業績が描けないというリスクが、余程の例外を除いては、従来にないほど大きなものとなっている。その反面、処遇や収入の面で、多くの経営者が、リスクに見合うだけの対価を得にくくなっていることもある。
要は、中小企業の経営者という職業が、現在の多くの経営者が会社を継いだ頃に比べ、ハイ・リスクでロー・リターンの職業になってしまい、今から継ごうと考える後継者にとっては、地位としての中小企業の経営者の魅力が薄れてしまったといえる。
その結果として、子供達が継ぎたくない、また、子供達には継がせて苦労をさせたくない、との思いが、中小企業の後継者難に拍車を掛け、結局は、後継者不在を解消できずに、やむを得ず廃業に至るということにつながっている。
3.承継先(買い手)について
(1)事業承継M&Aは承継先(買い手)があって成立する
事業承継M&Aは、親族内での事業承継と同様、中小企業の事業を継続させることが大きな目的である。ただ、承継が完結するまでの進め方や手続きの面を見れば、親族内での事業承継では、その企業の内部だけで完結できるが、事業承継M&Aの場合は、後継者不在の企業(売り手)と承継先(買い手)が、各種の条件について合意や了解をしていく必要があり、完結するまでの過程が大きく異っている。
つまり、事業承継M&Aを成立させるには、後継者不在の企業(売り手)と承継先(買い手)が、お互いの立場を尊重し、共存共栄の精神を持つことが重要である、ということをよく認識して支援することが肝要である。
(2)承継先を探す、見つける
事業承継M&Aの支援の依頼を受けた場合には、まず、最適と思われる相手先を探し、見つけることが、第一歩かつ最重要な役割となる。
事例V-2-(2)-@〜Bは、金融機関が、承継先を探している売り手から相談を受け、自行庫のルートを活用し、希望に添う相手先を探して、成約させた例である。
事例V-2-(2)-C〜Eは、後継者不在企業が従来からの関係先や知り合いの中から、自ら選定した例である。特に、小規模企業の場合、広く承継先を探すことは難しく、取引先や仕入先、経営者の縁故の中から、相手先が出てくることは稀ではない。
(3)承継先の目的
承継先(買い手)の目的については、提案シート集の中で詳述するが、売り手から見た業種は、異、周辺、川下、川上と多種多様である。
後継者不在企業(売り手)から、相手先の探索と選定を依頼された場合は、同業と決めつけるとか、特定の業種にこだわるような先入観を捨てることが肝要である。
つまり、売り手企業とその事業の中身を見る、真の目利き力が問われることにもなる。
4.MBOとMEBO
事業承継M&AにおけるMBOは、会社内部の親族外の役員や社員が、承継先となるケースが考えられる。
2018年4月に制定された、相続税・贈与税の納税猶予及び免除制度は、一定の制約はあるものの、親族外の事業承継者が、税制面で極端な不利益を被らないよう配慮されたものとなっていて、中小企業のMBOを後押しするものと考えられる。
事例V-2-(2)-F、Gは、本制度が制定される前に実施されたもので、猶予や免除といった税務的な特典は受けていない。
また、本事例は、会社全体を承継したものではなく、地方拠点の長が、自らが所管・経営していた拠点の事業を、事業譲渡によって自ら新設した会社で承継したものである。
つまり、地方の営業拠点や製造拠点の単位で独立し、各々の拠点の事業を継承すれば、会社の廃業により全ての事業が散逸することを防ぎ、限定的ながら事業の存続が可能となるという事例である。
このような手法を活用すれば、大都市圏に本社のある企業の地方拠点の独立も可能であり、地方創生の一助ともなり得るものである。
(文責: 潟lットM&Aコンサルティングファーム 湊雄二)
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