■ 事業承継シート 【提案シート】  


 提案シートへ 

 
提案シート第U編 親族内承継編 1.親族内承継対策提案シート集 (1)承継後の経営安定対策

<< 前に戻る

目次へ >

 

事業承継NET配信

@ 持株会社を活用した事業承継

・本スキームの意義として、オーナーが保有する自社株式の現金化により、将来の相続税の納税資金確保、親族間での遺産分割の準備が容易となります。
・親族等に分散している株式を HD が買い取ることにより、議決権の分散を抑え、経営の安定化を図ることが可能となります。
・また、株式購入資金の金融機関等からの借入れについては、事業会社からの配当を借入金返済原資に利用できます。

 持株会社とは、他の株式会社を支配する目的をもって、その株式を保有する会社のことをいいます。

 持株会社を活用することで、次の効果を得ることができます。

・株価対策を行ったうえで持株会社へ売却することで、より効果が得られます。
・株価の将来の上昇幅を抑制することができます。
・譲渡所得は分離課税のため、低い税率で後継者に所有権を移すことが可能です。

 以下、提案シートの例をもとに解説します。


1.持株会社スキームの概要(提案シートの図参照)

@後継者が持株会社を設立(もしくは、既存の会社を持株会社として利用する)
A持株会社は株式の購入資金を金融機関等から借り入れる
Bオーナーを含めた株主は事業会社の株式を持株会社に譲渡する(持株会社は事業会社の株式を全株取得する)
C持株会社は事業会社からの配当を受け取り、金融機関等に借入金を返済する


 本スキームのメリット、デメリットは次のとおりです。

2.メリット

●通常、非上場株式は換金性が乏しいが、持株会社に譲渡することで換金することができます。この場合、オーナー(個人株主)は、譲渡所得として申告分離課税となり、役員報酬や配当と比べて税率が有利になる可能性があります。
●株式を売却した後は、その株式にかかる相続税の問題から開放され、事業活動に専念することができます。
●後継者は、事業会社の株式を持株会社を通して間接的に保有することによって、将来の株価上昇を抑制できます。

※純資産価額方式の計算上、所有している資産の時価が取得時の価額を上回る場合、含み益に対して、法人税相当額37%の控除が認められています。そのため、将来の株価上昇により生じる含み益に対して37%控除した評価となります。


3.デメリット

●持株会社は、株式購入資金を準備する必要があるため、利息を含めた返済計画をたてる必要があります。
●持株会社を新設する場合、運営について追加のコストや事務負担が発生します。
●株式を譲渡したオーナーは、事業会社に対する所有権のみならず議決権を失うことになります。そのため、持株会社の株式の一部を拒否権付き株式としてオーナーが保有するなど、一定の対策をすることが望まれます。


4.税務上の取扱い

 また、税務上の取扱いにも注意が必要です。

●個人と法人の取引は、相続税評価額ではなく、時価で行う必要があります。時価と相違する価額で売買した場合、差額について追加的な課税が生じるおそれがあります。特に時価の2分の1未満で譲渡した場合は、売主(オーナー)は時価で譲渡したものとみなされて所得税が課税され、買主(持株会社)では、時価との差額が受贈益となります。
●株式を譲渡した株主は、譲渡代金から取得費を差し引いた譲渡益に対して、20.315%( 所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)が課税されるため、翌年の3月15日までに確定申告し納付する必要があります。

(文責: 辻・本郷税理士法人 http://www.ht-tax.or.jp/

 

 

 

見本版
・このサイト内の情報は、お客さまに対する情報提供や店内勉強会などに活用されることなどを目的としており、会計上、税法上、その他専門的助言を提供するものではありません。試算につきましては、株式会社銀行研修社作成の計算システムを利用した概算であり、税制改正や経済情勢等の変化により相違が生じることがあります。対策等を実施される場合は、事前に税理士等の専門家にご相談ください。
・このサイト内のすべての文章・図表の著作権は、株式会社銀行研修社および執筆者に帰属しますが、お客さまに差し上げたり、店内勉強会の資料として利用する等のための印刷・コピーは許諾致しますので積極的にご活用ください(見本版でのご活用はご遠慮ください)。ただし、著作権者は、この情報を用いて利用者が行う判断一切について責任を負うものではありません。個別具体的な事案に関しては、専門家にご相談されることをお勧め致します。
・ 本稿は、本文中に特に記述のあるものを除き、2019年8月1日現在の法令・データ等に基づいています。

企画・制作 株式会社銀行研修社
©2023 辻・本郷税理士法人/潟lットM&Aコンサルティングファーム 湊雄二