卸売業
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医療用機械器具卸売業

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このシグナルは、現状から今後6ヵ月間の見通しを短評。

総務省『経済センサス-活動調査』(平成30年3月公表)によると、平成28年の事業所数は4,753所、従業者数は65,451人、年間商品販売額は5,584,837百万円となっている。医療保険制度の見直しにより、近年国民医療費の伸びは鈍化しているが、今後さらに進展する高齢化や高度医療に対するニーズの高まりを背景に底堅い需要が見込まれる。(2018年5月改訂/中小企業診断士・木村充 mitsuru240956@gmail.com)

 

年間商品販売額

事業所数

従業者数

平成24年

4,513,231百万円

3,961

55,415人

平成26年

4,930,752百万円

3,895

53,762人

平成28年

5,584,837百万円

4,753

65,451人

資料:平成28年は総務省『経済センサス-活動調査』平成30年3月公表(医療用機械器具卸売業(歯科用機械器具を含む))、平成26年は経済産業省『商業統計表・産業編』平成28年6月公表(医療用機械器具卸売業(歯科用機械器具を含む))、平成24年は総務省『経済センサス−活動調査』平成25年11月公表(医療用機械器具卸売業(歯科用機械器具を含む))。

 ※複数の出典からなる上記指標について、各調査項目の定義、調査時点の相違などから、厳密には両指標の数値と連結しない部分がある。数値の解釈に当たっては留意されたい。

5724.jpg業界動向

1高齢化時代を迎え、健康関連機器や福祉関連機器・看護補助装置等の新しい分野の機器が強く望まれているが、(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)の新規商品の審査遅れに伴うデバイス・ラグ状態が顕在化、国際競争力低下と魅力的商品の開発遅れに拍車をかけている。一方で外資系輸入商社の伸長もあり、厳しい状況も窺われる。

2小児用補助人工心臓など、海外では使用できるが国内では未承認(デバイス・ラグ)の機器があるほか、が国は高齢化が引き続き進んでおり、当業界は追い風にあるといえる。また、最新のICT機器との融合の動きもある。

32008年4月の償還価格のマイナス改定・広域にわたる病院の医療機器の共同購入の進展や経営改善に努める医療機関からの値下げ要求による販売価格の低下により、医療機器ディーラーの経営環境は引き続き厳しさを増している。

4高額な医療機器は市場が小さいうえに、卸売業には中小企業が多く、しかも需要側の保守管理体制が不備なため無償サービスを多く強いられる傾向が強かったが、公正取引規約と安全管理の強化から、医療機器の保守点検業務に関する基準が明確化され、改善傾向にある。一方で、近年、医療機器を安全に提供するための納品体制や情報システムの整備等に関わる医療機器ディーラーのコスト負担が大きくなっている。

5733.jpg業態研究

■ 主要商品

 医療機器には高度先進医療に利用される高額・大型の機器から、レントゲン関連機器、手術・処置関連機器・検査関連機器・薬剤関連機器・検査関連機器といった直接医療に関わる機器、給食栄養科の厨房機器、ディスポーザブル製品(使い捨て注射器など)のような消耗品にいたるまで、医療関連機器は非常に多い。

■ 経営形態

1中小卸売業者は医療機関との人脈や、小回りが強みとなっているが、消耗品や小さな医療機器類についても、共同購入やSPD(Supply Processing & Distribution=物流管理)の導入により在庫管理コストと購買価格を抑制することが望まれるが、これらの動きに対応できないところは淘汰されていく動きにある。

2DPC(Diagnosis Procedure Combination=疾病群別包括払い制度)の一般化や、販売事業者が、医師が医療機器を扱う際に立ち会って、操作指導や操作そのものを行うにあたってのルールを定めた、医療機器の立会い規制(2008年)、診療報酬改定など、さまざまな法規制への対応力が要求され、それに合わせて、経営形態を変えていく柔軟さが要求される。中小卸売業者の主要販売先である、小規模な病院や診療所には、通販型の企業が強みをみせている。

■ 規制緩和

 医療機器は人体へのリスクの高さに応じて4段階に分類されており、上位2段階は(独)医薬品医療機器総合機構の審査と厚生労働大臣の承認により市販が認められ、下位2段階は届出や民間認証で市販が認められることとなっている。政府は当該規制を緩和し、民間認証の範囲を広げることで医療機器の製品開発を後押しし、医療機器市場の活性化につなげようとしている。

5712.jpg流通・資金経路図

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5743.jpg営業推進のポイント

■ 売上の見方

1公正競争規約がかなり浸透しているが、販売競争が激しい業界であり、値引き等も日常的に行われており、売上高が増加するほど売上高に対する総利益率は低くなる。

2売上高を医療機器・消耗用品・修理・その他別に構成費率でみて、担当する業務の従業員1人当りの売上高の妥当性を検討する。

3帝国データバンク『第60版全国企業財務諸表分析統計』2016年度・2017年11月発行(精密機械・医療用機械器具卸売業)によれば、売上に関する主な指標は次のとおりである。

   1人当たり売上高  83,802千円

   売上高増加率  5.09%

■ 採算の見方

 前掲『第60版全国企業財務諸表分析統計』によれば、採算に関する主な指標は次のとおりである。

   総資本経常利益率  3.65%

   売上高総利益率  23.45%

   売上高営業利益率  1.66%

   売上高損益分岐点倍率  1.14倍

■ 取引深耕のためのチェックポイント

1経営者の病院や診療所に対する人脈は重要であるが、診療報酬制度や薬事法、医療法の変化に対する対応方針、加えて、業界に情報網があり業界の動きを正しく把握し、他の業者と柔軟に連係を保っているかも極めて重要である。

2現場の診断・治療法の動きをよく把握し、仕入先に的確に医療機関の情報やニーズをフィードバックでき、仕入先メーカーとの強い信頼関係から、新製品に関する情報が早く入手でき、医療機関にこれを提供できることが必要である。

3医療機器メーカーおよび主力製品、ならびに特徴をつかんでいるか。

4得意先(医療機関)の経営情報、資金繰り、人事の動き、院長の特質や人脈などをつかんでいるか。

5750.jpg融資判断のポイント

■ 事業性評価のポイント

1値引きによって必要以上に収益を圧迫していないか、また販売先医療機関の信用度を調べ、回収が確実に行えるかなど、販売先との関係についても見ていく必要があり、また競争が激しいことから、病院、診療所に人脈を有しているか、新製品情報を早く掴めるか、業界の動向を把握できているかなども確認しておく必要があろう。

2医療行政の動きと、その影響度についての認識、対応方針の有無の確認も必要。

■ 運転資金

1医療機関は、主力購入先に対して支払を長期化する傾向がある。したがって、その医療機関の信用度を調べるとともに、売掛金の回収期間を調べて運転資金の貸出の妥当性をみる。普通は納入後3カ月くらいである。

2財務諸表の提出を求め、安全性・収益性・成長性を検討する。経営者の長期展望の有無および経営計画の内容を把握する。経営計画と実績を把握して、その差異をなくすための手を打っているかを調べ融資の判断材料とする。

3新規取引先(開業)の場合は、特にその医療機関の院長との面談を必要とする。その際は院長に新規取引のお願いという形で出向き、開業資金調達・規模・方針・医療に対する姿勢などを把握する。

4個人資産について十分調べる。中小企業の場合、決算書では利益が少なくとも、個人の給与が高く、資本の移動をしている場合がある。また、逆に決算書では利益を多く出しているにもかかわらず、個人の給与が少なく、個人財産が形成されてない場合もある。

5かつてのメインの銀行に融資を断られた場合、深入りしないこと。

6医療機関は、高額なME機器の購入に際してリースの活用が多い。必ず契約書の提示を求めて、その裏付けをとっておく。

7経営者の人柄、主な取引メーカーとユーザーの顔ぶれ、営業成績、従業員のモラルをみる。

8国公立の病院では予算の制約で支払サイトが1年間も伸びることがある。その場合の受注の確実性を確かめること。

■ 設備資金

1医療用機械器具卸売業の設備投資は、新社屋の建設・倉庫の建設くらいのもので、機械装置類のものは必要としない。したがって社屋の必要性・倉庫の必要性を検討すること。小規模なところでは、小さな貸室1つで机を並べ、電話とファックスのみという企業も多い。

2設備投資をしてもすぐに利益を生むものではない。安易な発想か、経営者の見栄かを判断する。

3設備資金は当然担保を必要とするが、その担保力はあるか。経営者の資産構成を調べる。

4返済は利益返済となるので、財源算出にあたり、税引後の純利益額と減価償却額の範囲内が一応の目安となる。しかし、利益額の妥当性については、医療機関の経営環境の悪化から従来の利益額の期待は望まれないので、慎重に検討することを要す。

■ 〈制度融資ガイド〉

 日本政策金融公庫融資

 その他、各自治体等による制度融資あり

主な経営指標

調査年

項目

平成26年度

平成27年度

平成28年度

収益性

総資本経常利益率

3.62%

3.18%

3.65%

売上高総利益率(粗利益率)

23.18%

22.12%

23.45%

売上高経常利益率

2.22%

1.90%

2.07%

売上高営業利益率

1.82%

1.56%

1.66%

売上高金利負担率

0.39%

0.36%

0.32%

効率性

総資本回転率

2.14回

2.06回

2.07回

売上債権回転期間

2.30月

2.37月

2.38月

棚卸資産回転期間

0.79月

0.81月

0.77月

買入債務回転期間

2.00月

2.06月

2.00月

安定性・流動性

自己資本比率

24.63%

24.89%

26.22%

流動比率

210.33%

204.74%

217.16%

固定長期適合率

46.39%

48.51%

45.93%

成長性・生産性

売上高増加率

6.54%

4.03%

5.09%

経常利益増加率

104.85%

41.29%

50.12%

1人当たり売上高

83,629千円

85,867千円

83,802千円

採算性

売上高損益分岐点倍率

1.06倍

1.13倍

1.14倍

集計企業数

808社

793社

858社

資料:帝国データバンク『全国企業財務諸表分析統計(第58〜60版(平成27〜29年発行))』(精密機械・医療用機械器具卸売業)