製造業
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アイスクリーム製造業

0914

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このシグナルは、現状から今後6ヵ月間の見通しを短評。

アイスクリーム市場は、出荷数量・額ともに拡大傾向である。昨今は製品開発が進んだことにより、アイスクリームは子どもが夏場に楽しむ冷菓・氷菓子ではなく、世代を問わず年間を通したスイーツとして認知されてきている。半面、フレーバーとして一番人気であるバニラの原材料価格が高騰したり、流通業がプライベートブランドで参入したりするなどの逆風も吹いている。個別の事業者を見る場合は、要介護者などライフスタイルを切り口とした新たなターゲットへ向けた製品開発の他、消費者がSNSに投稿したくなるような話題性に富んだ製品開発などインターネットとの融合性を意識したマーケティングに取組んでいるかどうかがポイントとなるであろう。(平成29年7月改訂/中小企業診断士・三上康一  https://www.triple-up.net/

6156.jpg業界動向

 

出荷額

事業所数(従業者4人以上の事業所)

平成24年

310,447百万円

272

平成25年

327,093百万円

261

平成26年

339,817百万円

259

資料:経済産業省『工業統計表・品目編』平成28年3月公表(アイスクリーム)

1一般社団法人日本アイスクリーム協会によれば、平成15年に業界の売上減少が底をついた後、売上回復の転機になったのは、リーマンショックを受けて、平成21年に断行した値上げにあったとしている。当時、業界での販売数減少の懸念をよそに、大幅な売上回復を見せ、アイスクリームは価格訴求がすべてではないことの証明となった。また、同協会では、「若年向けやシニア向けなどの切り口だけで製品開発をするのではなく、もっと自由にアイスクリームを食べてもらえる方向への展開が大切である」としている。

2原材料費高騰の影響として、代替燃料の代表格であるバイオエタノール需要が増加したことによる飼料高、また直接的な製造・輸送コスト増も資金繰りに影響してきている。

3品質管理ではHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Pointの略:危害分析重要管理点と訳される。原材料の生産から消費までの全工程で考えられる危害をすべて洗い出し、その防止ポイントを定めて、継続的にチェックすることで危害を未然に防止するシステム)の導入により、いかにあらかじめ危害を予測し、その危害を未然に防止するかが重要となっている。

6131.jpg業態研究

■ 商品の特色

 厚生労働省令でアイスクリームの種類は、次の3種となっている。アイスクリーム…乳固形分15%以上、うち乳脂肪分8%以上。アイスミルク…乳固形分10%以上、うち乳脂肪分3%以上。ラクトアイス…乳固形分3%以上、うち乳脂肪分規定なし。

 なお、氷菓は、乳成分がないものをいい、アイスシャーベット、アイスケーキなどがこれに含まれる。

■ 業界構造

 上位8社の企業形態を見ると、乳業メーカーが4社(雪印メグミルク、よつ葉乳業、明治乳業、森永乳業)、製菓会社が4社(江崎グリコ、ロッテ、森永製菓、クラシエフーズ)となっている。上位10社が8割以上を占め、残りを約700社でシェアを分け合っている状況にある。当業界構造を従業者数と出荷額で見ると、従業者数100人以上の大手事業所は事業所数では全体の20.8%に過ぎないが、出荷額では77.0%の大きなシェアを占めている。

 

従業者数

4人〜9人

従業者数

10人〜19人

従業者数

20人〜99人

従業者数

100人以上

 

産出事
業所数

出荷額
(百万円)

産出事
業所数

出荷額
(百万円)

産出事
業所数

出荷額
(百万円)

産出事
業所数

出荷額
(百万円)

平成24年

74

1,904

55

2,347

93

44,272

50

261,924

平成25年

65

1,749

47

1,773

96

43,549

53

280,022

平成26年

61

1,606

50

2,131

94

74,272

54

261,808

資料:経済産業省『工業統計表・品目編』平成28年3月公表(アイスクリーム)

■ 生産の特色

 アイスクリーム製造業におけるHACCP実践のために、以下のような衛生管理マニュアルが作成されている(ただし、HACCPの認証取得は任意であり、コストも管理体制も必要なことから、ある程度の企業規模と体力がないと導入は難しい)。

(1)品質事故の防止とその対策

①基本的な考え方、②企業における事故防止対策

(2)品質事故の拡大防止と発生時の対応

①基本的な考え方、②平常時における対応、③事故発生時の初期対応、④重大な品質事故が生じた際の対応、⑤危機収束段階の活動

(3)アイスクリーム類想定事故例

①原料・包材に由来するもの、②仕込・殺菌工程に由来するもの、③製造工程に由来するもの、④流通工程に由来するもの

(4)食品の食中毒・異物混入等食品事故分類表

(5)米国における食品のリコール制度の概要

■ 製造工程

1製造工程は、アイスクリームの完成までに大まかに分けて13段階ある。新鮮な材料からアイスクリーム特有のまろやかな食感を出すための適正な製造法および在庫管理と効率的な配送システムの構築が経営上の課題であるが、最近、さまざまな製造法が研究・開発されており、コストダウンが進んでいる事業者が多い。

2HACCPにおいては、重要管理点を特定して、そのポイントを継続的に監視・記録(モニタリング)し、異常が認められたらすぐに対策を取って解決し不良製品の出荷を未然に防ぐため、①実践のための一般的衛生管理マニュアルをいかに上手く従業員教育に活用するか、②「アイスクリーム類想定事故例」における実際に品質事故が発生した時の対処方法や、消費者クレームへの対応方法、再発防止対策等をいかに上手く現場に役立てるかを検討する。

■ 保管・輸送

1冷凍車で配送することが通常であり、流通経路は、工場→冷凍配送者→小売店等→消費者、となっている。冷凍車や保管・輸送でのコストダウンが相当進んでいることから、今では冷凍車や保管・輸送に多大な費用が要するところは淘汰されるところとなっている。流通保管に関してメーカーでは、通常-25℃以下で保管する。配送中の冷凍車の室温は-18℃以下に維持され、店頭のショーケースは-20℃に設計されている。このような保管体制で、消費者の手に渡るまでアイスクリームの鮮度と風味を保持している。

2アイスクリーム業は、消費者に安全で良質なアイスクリーム製品を安定的に供給する社会的責務があり、原料調達から工場での製造、保管、輸送、消費に至るまで、その品質管理には万全を期す必要がある。アイスクリーム製品は冷凍保管、冷凍流通されるため細菌の増殖による品質事故は極めて起こりにくいが、一方で多品種少量生産であること、ライフサイクルが短いこと、充填機に開放部分が多いこと、人手の介在する工程が多いこと等の特徴があり、細菌の二次汚染防止と異物混入防止には特段の注意が必要である。このためアイスクリーム製造業は従来から、製品特性、製造工程、生産規模等に応じて、おのおのが品質管理に努めてきたところである。

図表 アイスクリーム類及び氷菓の販売量・金額 (単位:KL)

 

平成23年度

平成24年度

平成25年度

平成26年度

平成27年度

アイスクリーム

140,560

157,860

169,830

165,815

164,315

アイスミルク

138,390

144,020

139,550

141,809

153,339

ラクトアイス

341,160

330,670

339,600

331,013

337,215

氷菓

189,290

190,740

192,580

191,214

181,140

合計

809,400

823,290

841,560

829,851

836,009

販売金額

4,058億円

4,181億円

4,330億円

4,369億円

4,647億円

資料:(一社)日本アイスクリーム協会のホームページより作成

6035.jpg流通・資金経路図

k_019.gif

6140.jpg営業推進のポイント

■ 売上の見方

1アイスクリーム業界の売上は、オールシーズンを狙っての商品開発、販売促進が積極的に進められており、そうした活動の成果を見る必要がある。業界全体としては、ここ数年販売量が増加傾向である。

2当業界の経営指標は作成されていないが、帝国データバンク『第59版全国企業財務諸表分析統計』平成27年度・平成28年11月発行(その他の飲食料品製造業)によれば、売上に関する主な指標は次のとおりである。

   1人当たり売上高  55,516千円

   売上高増加率  6.08%

■ 採算の見方

 前掲『第59版全国企業財務諸表分析統計』によれば、採算に関する主な指標は次のとおりである。

   総資本経常利益率  2.85%

   売上高総利益率  28.17%

   売上高営業利益率  1.55%

   売上高損益分岐点倍率  1.07倍

■ その他の着眼点

 前掲『第59版全国企業財務諸表分析統計』によれば、効率性・安定性に関する主な指標は次のとおりである。

   総資本回転期間  9.97月

   固定資産回転期間  5.06月

   自己資本比率  23.89%

   流動比率  231.41%

■ 取引深耕のためのチェックポイント

1新鮮な材料からアイスクリーム特有のまろやかな食感を出すための新規開発設備を有する大企業か、中小メーカーか。

2適正な製造法および在庫管理と効率的な配送システムが経営上の課題であるため、新商品開発・アイデア抽出やコストダウンが行われ、対外的競争力を十分にもっているか。

3適正な製造法および在庫管理と効率的な配送システムにおいて、計測器や検知器を使った計数管理の実施、および、これに必要な労働者確保の対策が確立されているか。

4特殊な機械で混合・加工・冷却する設備規模、および特殊な機械のコストダウンの進捗状況はどうか。

5自社ブランド商品群をもっているか。舌の肥えた消費者ニーズの変化に沿った新製品開発は行われているか。

図表 形態別売上高推移 (単位:億円)

形態別

平成23年度

平成24年度

平成25年度

平成26年度

平成27年度

紙カップ

604

700

716

713

808

プラカップ

378

365

414

410

456

スティック

400

425

448

443

452

コーン

302

285

308

323

333

モナカ

234

227

249

271

296

マルチパック

1,204

1,202

1,212

1,233

1,250

ホームタイプ

52

56

55

55

47

業務用

400

424

432

401

421

その他

484

497

496

520

583

合 計

4,058

4,181

4,330

4,369

4,647

資料:(一社)日本アイスクリーム協会ホームページより作成

6147.jpg融資判断のポイント

■ 事業性評価のポイント

 審査にあたっては原価高騰が損益面にどのように影響しているか、金利負担を賄える収益力を維持できているか等が、与信面では重要な事項である。

■ 運転資金

 現金が活発に動く夏季の回収期には、納税・賞与およびその他の運転資金に備えるために、減税もしくは非課税手続、預金歩留りも指導する必要がある。流通保管コストや家庭保管コストもかかり、日常の食べごろ温度の管理体制も十分チェックする必要がある。

■ 設備資金

1適正な製造法および在庫管理と効率的な配送システムの新規開発やコストダウンを行うので、設備投資については、計画段階で投資効果が十分か検討する。

2経営方針資金使途資金調達の適否をはじめ、売上高・利益計上額や減価償却費から見た返済原資の妥当性や取引効果についての十分な検討を行う

■ 〈制度融資ガイド〉

 都道府県等 小規模事業者経営改善資金融資制度

主な経営指標

調査年

項目

平成25年度

平成26年度

平成27年度

収益性

総資本経常利益率

2.43%

2.77%

2.85%

売上高総利益率(粗利益率)

27.87%

27.62%

28.17%

売上高経常利益率

1.78%

1.94%

2.07%

売上高営業利益率

1.52%

1.57%

1.55%

売上高金利負担率

0.72%

0.64%

0.68%

効率性

総資本回転率

1.73回

1.71回

1.72回

売上債権回転期間

1.64月

1.69月

1.66月

棚卸資産回転期間

1.00月

1.09月

1.13月

買入債務回転期間

0.97月

0.99月

0.96月

安定性・流動性

自己資本比率

23.04%

26.30%

23.89%

流動比率

222.81%

224.14%

231.41%

固定長期適合率

76.01%

71.88%

72.42%

成長性・生産性

売上高増加率

3.01%

5.24%

6.08%

経常利益増加率

▲29.04%

32.44%

50.31%

1人当たり売上高

54,132千円

56,182千円

55,516千円

採算性

売上高損益分岐点倍率

1.07倍

1.07倍

1.07倍

集計企業数

434社

448社

466社

料:帝国データバンク『全国企業財務諸表分析統計(第57〜59版(平成26〜28年発行))』(その他の飲食料品製造業)