製造業
0-4

養鶏業(採卵)

0124

景気予測お天気マーク

曇り
上
晴れ

このシグナルは、現状から今後6ヵ月間の見通しを短評。

日本養鶏協会の資料によると、鶏卵の生産量と鶏卵価格は安定して推移している。業務用の消費増に伴う鶏卵消費量は微増傾向にあり、価格も安定している。日本人一人当たりの鶏卵の消費量は世界最高水準にあり、今後も安定した需要が見込める。鳥インフルエンザ等の伝染病による飼育鶏の殺処分などのリスクはあるものの、政策金融公庫のニュースリリース(平成29年3月)では、採卵鶏における生産施設や環境対策に対する投資意欲が高まっていることから、当面は安定した推移が見込まれるため当面の見通しを晴れと予想。(平成29年7月改訂/中小企業診断士・農業経営アドバイザー 江崎秀之 http://ezakiayh.wixsite.com/management

5788.jpg業界動向

 

飼養戸数

種類

ひな

成鶏めす

種鶏

平成25年

2,730戸

39,153羽

133,085羽

2,546羽

平成26年

2,640戸

38,843羽

133,506羽

2,457羽

平成27年

2,530戸

38,780羽

134,569羽

2,384羽

資料:農林水産省『畜産統計調査‐採卵鶏「飼養戸数・頭数」』平成28年7月公表

 

平成23年度

平成24年度

平成25年度

平成26年度

平成27年度(概算)

消費量

2,633千トン

2,624千トン

2,642千トン

2,629千トン

3,632千トン

生産量

2,495千トン

2,502千トン

2,519千トン

2,502千トン

2,521千トン

輸入量

138千トン

123千トン

124千トン

129千トン

114千トン

輸出量

459トン

722トン

1,266トン

1,888トン

3,069トン

資料:農林水産省『平成26年度食料需給表‐鶏卵』平成28年3月公表

   平成27年度数値は日本養鶏協会『鶏卵をめぐる情勢』を参照。

1農林水産省『食料需給表』の鶏卵需給の推移によると、生産動向は平成23年度の東日本大震災の影響により一時的に年間250万トンを下回ったが、平成24年度以降は若干の変動はあるものの概ね安定的に推移している。消費量は年間260万トン強で概ね安定的に推移しており、国内消費の5%程度を輸入に頼っている。鶏卵の卸売価格は夏場の不需要期に向けて価格が低下し、年末の需要期にかけて価格が上昇する傾向にあるが、平成28年度は需要が低調に終わり前年比で微減となった。

2飼養戸数は、小規模層を中心に近年4〜6%程度減少しているが、1戸当たりの平均飼養羽数は一貫して増大しており、規模が拡大している。

3日本の鶏卵の一人当たりの消費量は、世界でも最高の水準にある。

4平成29年3月には、宮城県ではH5N6型の高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染が確認され、飼育鶏約20万9千羽が殺処分された。また、千葉県の養鶏場でも同型の鳥インフルエンザウイルスに感染し、約6万2千羽が殺処分されている。

5輸入鶏卵は殻付き卵としてだけでなく、乾燥卵黄(菓子等の原料)、冷凍液卵(マヨネーズ等の原料)、乾燥卵白(かまぼこ等練物の原料)などの形をとっており、オランダ、イタリア、米国、インドからの輸入で約4分の3を占めている。

6高級食材需要を中心に殻付き鶏卵の輸出は伸びている。輸送距離や形成条件の関係上、大半が香港に輸出されている。

5795.jpg業態研究

■ 生産形態

・低床式鶏舎:1970年代に主流であった鶏舎で、設備投資は少なくて済むが、通路を挟んで2〜3段のケージ列で、給餌、給水、集卵などが手作業で行われることが多く、産卵成績にばらつきが見られる。

・高床式鶏舎:鶏舎の2階にケージを組み立て、2階部分で鶏を飼養し、糞を1階に落として糞を堆積する構造を高床式鶏舎という。高床式鶏舎の利点は、新鮮な空気がケージ下から入って換気量が増加するため、多羽数・高密度飼育に適し、排泄糞を大量に蓄積できる(糞の処理回数が少なくなる)ことであるが、堆積糞がハエの発生源となりやすいという欠点もある。

・開放型鶏舎:鶏舎内の換気は自然換気で行う。冬場はカーテン等で密閉をし、温度管理をする。平飼いは、この種類の鶏舎を使うことが多い。

・平飼い鶏舎:平飼い養鶏は、床の上で平面飼育する飼い方である。ケージ飼育でなく、平飼いによる有精卵生産、卵拾い農場などの「自然派養鶏」は、生産効率の面では劣るが、ストレスがなく健康的なイメージを持たれ、消費者の心をとらえた養鶏経営といえる。

・閉鎖型鶏舎:下記2種類の鶏舎。

 セミウインドウレス鶏舎:鶏舎の大部分の壁構造を下部の開放部を除いて壁にし、自然の影響を受けにくくしている。舎内換気は換気扇と自然換気を併用する。

 ウインドウレス鶏舎:内部に自然光をいれない閉鎖型鶏舎は、壁と屋根に断熱資材を使い、大型の給・排気扇で換気量を確保する。その換気量を調節して、鶏からの発熱を利用した環境温度も調節できる。

■ 生産の流れ

①育雛期間:孵化してから40〜60日齢までは育雛期間。室温調整をして体力のない雛を保護する。

②育成期間:40〜60日齢になるとケージに移し120〜150日齢までを過ごす。この育成期間にワクチンを接種し病気等の伝播を防ぐ。

③成鶏期間:120〜150日齢に達すると成鶏農場に移し、約550日齢までを産卵鶏として過ごす。採卵期間を終えて鶏舎から出される雌鶏を廃鶏と呼ぶ。まだ産卵もできて健康だが、飼育コスト削減などの経済的理由により、と畜、解体される。

※強制換羽(きょうせいかんう):雌鶏に飼料を与えず産卵を停止させて、人工的に羽毛が抜け始めるのを誘起することを「強制換羽」という。初産から10カ月頃に卵質が低下した卵が増えてくるので、この時期に強制換羽をかけて卵質の向上をはかり、産卵再開後、8カ月間飼育する。通常の飼育鶏は13カ月採卵だが、強制換羽鶏は19カ月採卵(1カ月の休産をはさむ)と採卵期間が延びるため、ひなの導入回数も減り、強制換羽はコスト低減に結びつくといわれている。

④出荷工程

 GPセンター(Grading & Packing):各養鶏場で産まれ、運ばれてくる「たまご」を洗浄殺菌し、重量ごとにサイズ格付けし、包装する施設

 (ⅰ)洗卵:卵の汚れをしっかり落とし、次亜塩素酸ナトリウム溶液やオゾン水等で殺菌処理

 (ⅱ)検卵:血玉、ひび、汚れのチェック

 (ⅲ)計量・包装:サイズやブランド別に包装

 (ⅳ)出荷

■ 経営形態

 育雛は育成業者にまかせて、給温期間を終了した40〜50日齢の中雛を導入する、あるいは産卵開始直前の120日齢頃の大雛を導入する方式がよくみられる。中雛導入は、性成熟期(初産日齢)の調節、体重調整(雛の体重のバラツキをなくし、平均体重を目標値にあわせる)、ワクチン接種法(種類や接種時期)などの育成技術を駆使し、自分の経営にあった鶏に仕上げることができるのが利点である。大雛導入は、育成と成鶏管理を分業して行う。育成農場から育成された大雛を購入して、自分の農場で採卵養鶏にするための成鶏管理を行う。

 育雛・成鶏一貫経営は、餌付けから成鶏管理までをすべて自家農場で行う方式である。そのため、すべてに自分の納得がいく管理ができるが、それに見合ったさまざまな施設、設備と高い技術力が必要となる。

■ 相場動向

JA全農たまごM基準値 単位:円/kg

 

平成23年

平成24年

平成25年

平成26年

平成27年

鶏卵相場

196

179

194

222

228

資料:JA全農たまご㈱ 相場(東京)

単位:円/20kg

 

平成23年度

平成24年度

平成25年度

平成26年度

平成27年度

成鶏用配合飼料価格

1,236

1,291

1,416

1,450

1,436

資料:農林水産省『流通飼料価格実態調査』平成28年5月公表

 鶏卵相場(東京)について、平成24年は価格が軟調に推移したが、平成25年8月以降は猛暑の影響等から価格が上昇し、平成26年、平成27年と続けて旺盛な加工需要等に支えられ価格が上昇している。鶏卵価格の相場は、夏場の暑さによる需要減から価格が低下する一方、冬場は寒さによる減産と需要増による需給バランスから上昇する傾向がある。

 配合飼料価格については、とうもろこしなど海外からの輸入原料に依存した配合飼料が大勢を占めていることから、海外の穀物相場や為替相場の影響を大きく受ける。平成24年6月以降アメリカの大干ばつの影響を受けて飼料価格も上昇し、その後は円安の影響を受けて価格は高止まりしている。

8615.jpg流通・資金経路図

k_0-4.gif

5803.jpg営業推進のポイント

■ 売上の見方

1帝国データバンク『第59版全国企業財務諸表分析統計』平成27年度・平成28年11月発行(畜産農業)によれば、売上に関する主な指標は次のとおりである。

   1人当たり売上高  68,432千円

   売上高増加率  10.09%

2売上の要素のうち、販売単価については販売先ごとの販売単価を市場価格と比較する。

3販売数量については、飼養羽数の影響が大きいが、産卵率や破卵率などの飼養成績も確認する。

■ 採算の見方

1前掲『第59版全国企業財務諸表分析統計』によれば、採算に関する主な指標は次のとおりである。

   総資本経常利益率  5.75%

   売上高総利益率  24.56%

   売上高営業利益率  3.28%

   売上高損益分岐点倍率  1.24倍

2経費としては飼料費が全体の約50〜70%を占めるため、飼料の調達先(輸入配合飼料への依存度等)を確認する。

3飼料効率などの経費効率を確認するため、産卵率、飼料要求率、破卵率等のデータをチェックする。

■ 6次産業化のポイント

①個人農家(融資額5〜30百万円)の場合

 ・鶏種、飼料、飼育方法等にこだわったブランド卵生産に取組み、直売所の開設やスイーツ店と連携した加工販売に取り組むパターンが多い。

 ・農産物の直売所に取り組む1事業体あたりの年間販売金額は586万円、農産物加工は379万円。

②法人(10〜50百万円)の場合

 ・鶏舎の一部で鶏種、飼料、飼育方法等にこだわったブランド卵生産に取り組み、直売所やスイーツの加工施設等を開設するパターンが多い。

 ・農産物の直売所に取り組む1事業体あたりの年間販売金額は2,765万円、農産物加工は2,001万円。

■ 規模拡大のポイント

①個人農家(融資額5〜30百万円)の場合

 ・鶏舎の拡大や多段式ケージの導入により飼養羽数を増やす。

 ・ブランド卵の庭先販売やスイーツ等の加工販売に取り組む6次産業化により単価を上げる。

②法人(10〜50百万円)の場合

 ・鶏舎の内部施設としてケージシステムを導入し、自動集卵装置、給餌・給水機能、除糞機能等をコンピュータ管理できるようにすることで、規模拡大によるメリットを最大化できる。

 ・大規模経営を目指すには成鶏舎に隣接するGPセンターを自社で保有し、ベルトコンベアーで鶏卵を運ぶ設備も必要になってくる。

■ 取引深耕のためのチェックポイント

①個人農家(融資額5〜30百万円)の場合

  個人農家であっても、付加価値の高いブランド卵の販売、地元の安定した顧客に対する直売、規格外卵の加工販売等の強みを持っている経営体は収益性が高い。既存の販売ルートや6次産業化への取組みについて確認する必要がある。

②法人(10〜50百万円)の場合

  鶏卵の市場はほぼ飽和状態になっており、大手による寡占化が進んでいるため、当該事業体の販売実態が相場よりも安い価格での取引を強いられていないか、販売先との取引条件を確認する必要がある。また、当該事業体の経営方針が、大規模化によって生産効率を上げる方向性なのか、独自の販売ルートでブランド卵を販売し販売単価を上げる方向性なのかを確認する必要がある。

5811.jpg融資判断のポイント

■ 事業性評価のポイント

 当該事業体の経営方針について、規模拡大による生産性向上を目指すのか、ブランド卵を独自の販路で販売し単価向上を目指すのか、経営者の意向を確認するとともに、収益に大きな影響を与える鶏卵価格や飼料価格の見通しについても確認すべきである。積極的な販路開拓による安定的な販売先の確保、ブランド卵の直売による販売単価の向上を目指す一方で、飼料費削減やひなの仕入コスト削減にどれだけ工夫ができているかがポイントとなる。

■ 運転資金

1成鶏は約400日間卵を産み続けるが、卵の大きさや質を安定させるためには最低でも年に4回程度ひなを導入する必要があるため、ひなの購入費用や育雛・育成期間中の飼料代が必要になってくる。

2規模拡大のために必要となる運転資金調達である場合には、拡大した分の販路が確保できているのか、予定販売価格は適正であるかを確認する必要がある。

3コスト削減努力として、飼料調達方法の工夫による飼料仕入単価の低減に取り組んでいるか、強制換羽による飼養期間の長期化に取り組んでいるか等も確認する。

■ 設備資金

1最新の鶏舎・ケージシステムの導入のための設備資金調達である場合は、その設備導入による飼養成績の向上やコスト削減効果を確認する。

2直売所や加工施設等の6次産業化の取組みについては、販路の確保、販売計画のほか、新規事業の場合は人材確保やオペレーション等の確認が重要となる。

3糞尿処理については家畜排せつ物法等を順守し適正に処理しなければならないため、地域社会との共生を図っていくためにも適切な設備投資が必要になる。

■ 制度融資ガイド・補助金

1農業近代化資金

 JAが融資する建構築物等造成資金、家畜購入育成資金、長期運転資金等の15年以内の中・長期資金の融資制度。

2スーパーL資金

 日本政策金融公庫が融資する認定農業者向けの施設・機械、長期運転資金等の25年以内の長期資金の融資制度。

3畜産高度化支援リース事業

 (一財)畜産環境整備機構による畜産環境問題等に適切に対応するため、家畜ふん尿処理施設等、飼料の給与等に係る機械・装置及び家畜飼養管理等施設等に必要な施設等を貸付ける事業。

4強い農業づくり交付金

 高付加価値化や生産コストの低減など、産地の収益力強化や合理化を図る取組みに必要な共同利用施設の整備や再編を支援する交付金。

5鶏卵価格差補塡事業

 鶏卵の標準取引価格(月毎)が補塡基準価格を下回った場合、その差額の9割を補塡する制度。

6成鶏更新・空舎延長事業

 鶏卵の標準取引価格(日毎)が通常の季節変動を超えて大幅に低下した場合には、成鶏の更新に当たって長期の空舎期間を設ける取組みに対して、成鶏1羽当たり210円以内の奨励金を交付する制度。

7その他

 セーフティネット保証

主な経営指標

調査年

項目

平成25年度

平成26年度

平成27年度

収益性

総資本経常利益率

1.36%

3.74%

5.75%

売上高総利益率(粗利益率)

22.15%

21.72%

24.56%

売上高経常利益率

1.88%

3.47%

5.83%

売上高営業利益率

▲3.74%

0.48%

3.28%

売上高金利負担率

0.88%

0.78%

0.66%

効率性

総資本回転率

1.20回

1.23回

1.34回

売上債権回転期間

0.95月

0.85月

0.76月

棚卸資産回転期間

2.07月

2.15月

2.09月

買入債務回転期間

1.22月

1.05月

0.95月

安定性・流動性

自己資本比率

12.51%

18.38%

20.57%

流動比率

224.50%

223.71%

286.13%

固定長期適合率

74.56%

75.32%

73.83%

成長性・生産性

売上高増加率

8.10%

12.85%

10.09%

経常利益増加率

18.26%

115.88%

199.02%

1人当たり売上高

62,023千円

66,541千円

68,432千円

採算性

売上高損益分岐点倍率

1.10倍

1.12倍

1.24倍

集計企業数

147社

167社

206社

料:帝国データバンク『全国企業財務諸表分析統計(第57〜59版(平成26〜28年発行))』(畜産農業)