製造業
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養豚業

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このシグナルは、現状から今後6ヵ月間の見通しを短評。

豚肉の生産量はここ5年で約90万トン、輸入は約80万トンで推移している。一方、農林水産省『食肉の需給動向』(平成29年3月)によると枝肉卸売価格は例年と同水準で推移しており、豚肉消費量や食肉加工品の消費量もここ5年は増加傾向にある。日本政策金融公庫のニュースリリース(平成29年3月)において、養豚業における生産施設導入への投資意欲は農業全体の中でも最も高くなっており、好調な需要を背景として生産意欲が高まっている。向こう6か月の見通しを薄日と予想。(平成29年7月改訂/中小企業診断士・農業経営アドバイザー 江崎秀之 http://ezakiayh.wixsite.com/management

6156.jpg業界動向

 

国内

産出額

国内

生産量

輸入量

国内価格

国際価格

飼養戸数

1戸当たり飼養頭数

平成25年

5,746億円

917千t

744千t

713円

529円

5,570戸

1,739頭

平成26年

6,331億円

875千t

816千t

847円

556円

5,270戸

1,810頭

平成27年

6,214億円

888千t

826千t

532円

4,830戸

1,928頭

資料:農林水産省『平成27年農業総産出額及び生産農業所得』平成28年12月22日公表(国内産出額)、(独法)農畜産業復興機構HP『豚肉需給表』(国内生産量・輸入量)および『豚肉の輸入動向‐輸入価格(CIF)平均単価』(国際価格)平成29年4月公表、農林水産省『農林水産物品目別参考資料(追加資料用)』平成27年10月公表(国内価格)および『畜産統計調査‐豚「飼養戸数・頭数」』平成28年7月公表

1農林水産統計(平成28年12月)によると、畜産は農業総産出額の約35%を占める。そのうち、養豚は、平成27年度6,214億円で、約2割を占めている。国内生産量は県別で見ると、鹿児島、宮崎、千葉が多く、この上位3県で全国の豚産出額の3割を占める。飼養戸数は減少を続け、平成16年8,900戸から平成27年には4,830戸に減少した。一方で1戸当たりの飼養頭数は着実に増加し、平成27年では1,900頭を超えて大規模化が進んでいる。

2近年の消費動向を反映して輸入量は増加傾向で推移している(主な輸入先国は米国(37%)、カナダ(19%)、デンマーク(16%))。

3卸売価格は、一般的に夏場は冬期間の分娩頭数が少なく、暑さによる発育の遅れにより出荷頭数が減少することから価格は堅調に推移するものの、秋以降には出荷頭数が増え価格は低下する。

4平成24年度の肥育豚の1頭あたりの生産費32,179円のうち66%を飼料費、12.8%を労働費が占める。収益性を規模別に見ていくと、平均飼養頭数1,000頭以上の規模層で収益を確保(1,000頭未満では、1頭当たりの生産費が販売価格を上回る)飼養頭数2,000頭以上の規模層でも飼料数は67%を占めており、今後いっそうの飼料費の低減などの取組みが必要である。

5高付加価値化の1つとしてSPF豚の生産がある。SPFはSpecific Pathogen Free「特定の病原体をもっていない」という意味で、養豚においては「健康豚の飼育システム」であると解される。日本SPF豚協会ウェブサイトによると、SPF豚生産に取り組む農業者は4%、国産の豚肉のうちSPF豚認定農場産豚は10%と推定されている。

6他畜産業種と同様に後継者不足は深刻な問題である。日本養豚協会は「日本養豚大学校」を主宰して後継者の育成に取り組んでいる。

6131.jpg業態研究

■ 生産形態

 養豚農家は、①繁殖用の雄豚を飼育し、雌豚を妊娠させて子豚を取り上げ、飼育養豚家向けの市場に出荷する「子取り経営」②子豚を市場で購入し、飼育して成豚として出荷する「肥育経営」③繁殖から肥育、成豚を出荷するまでの「一貫経営」の3タイプがある。1980年代までは半数を占めていた子取り経営が激減して、多くが一貫経営に転換した。

■ 生産の流れ

 養豚では、繁殖豚と肥育豚に分かれる。繁殖用の親豚は「種豚」と呼ばれ雄雌どちらの豚も含まれる。雌の種豚(母豚)は、生後8カ月齢で交配し、約114日間の妊娠期間を経て、生後1年で分娩する。1回の分娩で10頭前後を出産し、平均して1年に2、3回、生涯では6回ほどの分娩を繰り返し、その後は食用にされる。肥育豚は生後180日前後でと畜される。黑豚(バークシャー純粋種)は、発育が遅いため、と畜まで240日前後かかる。

 肉豚がと畜場でと畜され、縦に2分割した半丸の枝肉になり、食肉加工業者などで骨を取り除きながら部位別に分割されて部分肉にされる。その後小売店や量販店で精肉となり、消費者に届けられる。

 豚肉の流通段階の歩留まりは以下のとおり。

k_000-3_2.gif

6035.jpg流通・資金経路図

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6140.jpg営業推進のポイント

■ 売上の見方

1帝国データバンク『第59版全国企業財務諸表分析統計』平成27年度・平成28年11月発行(畜産農業)によれば、売上に関する主な指標は次のとおりである。

   1人当たり売上高  68,432千円

   売上高増加率  10.09%

2農林水産省『平成27年度農業経営統計調査』によると、養豚経営(全国)の1経営体当たり農業粗収益は7,122万円で、前年比0.3%減少し、農業経営費は5,773万円で、同0.7%増加した。この結果、農業所得は1,348万円となり、同4.7%減少した。

■ 採算の見方

1前掲『第59版全国企業財務諸表分析統計』によれば、採算に関する主な指標は次のとおりである。

   総資本経常利益率  5.75%

   売上高総利益率  24.56%

   売上高営業利益率  3.28%

   売上高損益分岐点倍率  1.24倍

2飼料費が養豚経営コストに占める割合が高く、濃厚飼料の養豚経営の生産費の67割を占める。

3飼料穀物は輸入に依存しており、特に、米国・オーストラリアに大きく依存。国産飼料米の利用や食品残さ等を有効活用したエコフィードなどの飼料費低減の取組みが推進されている。

■ 6次産業化のポイント

①個人農家(融資額5〜30百万円)の場合

 主として、地域の顧客への販売・サービス提供に軸足を置いた事業を行うことにより、所得の増大と雇用の確保・拡大を図って、地域の活性化を目指す計画となっていること。

 例 直売(直売所、通信販売等)、食肉加工(ハム・ウインナ等) など

②法人(10〜50百万円)の場合

 産業としての競争力を強化し、輸出を含め市場競争を勝ち抜く製品・サービスの供給を行うことにより、所得の増大と雇用の確保・拡大を図って地域の活性化を目指す計画になっていること。

 例 レストラン事業、ファームパーク事業  など

■ 規模拡大のポイント

①個人農家(融資額5〜30百万円)の場合

・出荷時体重の均一化等による上物率の向上

・飼料調達方法の工夫による飼料仕入単価の低減

・衛生管理の徹底による事故率の低減

②法人(10〜50百万円)の場合

・ブランド化等による豚肉の差別化

・直売や量販店等との相対取引による豚肉価格の向上

・規模拡大によるオールイン・オールアウト方式(豚を出荷する際、豚舎を空にして、徹底的に洗浄・消毒させ、一定期間後に新たな豚を導入する方式)の確立、スケールメリットの享受

・単味飼料やエコフィードの活用による飼料コストの削減

■ 取引深耕のためのチェックポイント

①個人農家(融資額5〜30百万円)の場合

・経営の改善目標を立てて目標達成に努めているか。

・経営目標に沿って生産・販売計画を立案しているか。

・パソコンによる事務記帳・作業日報等による経営分析を行っているか。

②法人(10〜50百万円)の場合

・経営目標や経営方針は毎年見直してレベルアップを図っているか。

・マーケット動向や消費者ニーズを考慮した生産計画になっているか。

・環境保全や省資源対策に積極的に取り組んでいるか。

6147.jpg融資判断のポイント

■ 事業性評価のポイント

 豚の価格は季節的変動要素により、夏に上昇傾向、秋から冬にかけて下降傾向で推移する。こうした価格変動に対して、養豚経営安定対策事業や配合飼料価格安定基金への加入などのリスクヘッジを行っているかどうか確認すること。母豚の適切な管理・発情発見による受胎率の向上及び産子数の増加に取り組んでいるか確認すること。

■ 運転資金

 産まれてから6〜7カ月肥育期間、出荷されるまでの間、飼料費、人件費、水道光熱費などの経常的経費の支出が続き、その回収は肥育開始後の6カ月後の出荷後になる。運転資金の需要は、売上サイトと仕入サイトと肥育中の豚(棚卸資産)の規模などによって経営ごとに様々である。

■ 設備資金

 豚を飼育する豚舎、糞を処理する堆肥化施設、尿を処理する浄化処理施設などが必要となる。また、一般的に母豚は3年程度で更新されるため、更新のタイミングで資金需要が発生する。

■ 制度融資ガイド・補助金

1養豚経営安定対策事業

 養豚経営の収益性が悪化した場合に、生産者と国の積立金から粗収益と生産コスト差額8割を補填。対象者は、耕畜連携、エコフィードの活用等の取組みに努めようとする者。(政府は『総合的なTPP関連政策大綱』(平成27年11月25日)で、補填率を8割から9割にすることを打ち出している)

2配合飼料価格安定制度

 配合飼料価格上昇が畜産経営に及ぼす影響を緩和するため、①民間(生産者と配合飼料メーカー)積立による「通常補塡」と、②異常な価格高騰時に通常補塡を補完する「異常補塡」(国と配合飼料メーカーが積立)二段階の仕組みにより、生産者に対して補塡を実施。

 ・国境措置

 現行の豚肉関税は、輸入価格に応じた3種類の関税を組み合わせた制度となっている。輸入価格が1キロ当たり64.53円以下の豚肉は、従量税で同482円を徴収。TPPではこれを10年程度かけ50円に下げ、適用範囲を輸入価格で同474円の肉まで広げる。輸入価格が同524円の分岐点価格を超える豚肉には現在、関税率4.3%の従価税がかかる。TPPではこれを10年程度かけてゼロにする。従量税と従価税の間の価格帯(輸入価格同474円〜同524円)は、差額関税を維持する。基準輸入価格(546.53円)と実際の輸入価格の差額を関税として徴収し、基準輸入価格以下での輸入を防ぐ。TPPでは差額関税制度は維持されるが、従量税の範囲の拡大に伴い、差額関税が適用される範囲は大幅に狭まることになる。

3農業近代化資金

 農業経営の改善のため、農業用施設(建物・機械・家畜等)の整備拡充などにより、農業経営の近代化を目指す意欲と能力のある農業の担い手を応援する資金。

4日本政策金融公庫資金

スーパーL資金

 農業経営改善計画の認定を受けた認定農業者の自主性と創意工夫を活かした経営改善を、資金面で応援する総合的な資金。

農林漁業セーフティーネット資金

 災害や社会的又は経済的環境の変化による経営状況の悪化のための長期運転資金。

農業改良資金

 農業経営における生産・加工・販売の新部門の開始や、品質・収量の向上、コスト・労働力の削除のための新たな取組みのための無利子の資金。

主な経営指標

調査年

項目

平成25年度

平成26年度

平成27年度

収益性

総資本経常利益率

1.36%

3.74%

5.75%

売上高総利益率(粗利益率)

22.15%

21.72%

24.56%

売上高経常利益率

1.88%

3.47%

5.83%

売上高営業利益率

▲3.74%

0.48%

3.28%

売上高金利負担率

0.88%

0.78%

0.66%

効率性

総資本回転率

1.20回

1.23回

1.34回

売上債権回転期間

0.95月

0.85月

0.76月

棚卸資産回転期間

2.07月

2.15月

2.09月

買入債務回転期間

1.22月

1.05月

0.95月

安定性・流動性

自己資本比率

12.51%

18.38%

20.57%

流動比率

224.50%

223.71%

286.13%

固定長期適合率

74.56%

75.32%

73.83%

成長性・生産性

売上高増加率

8.10%

12.85%

10.09%

経常利益増加率

18.26%

115.88%

199.02%

1人当たり売上高

62,023千円

66,541千円

68,432千円

採算性

売上高損益分岐点倍率

1.10倍

1.12倍

1.24倍

集計企業数

147社

167社

206社

料:帝国データバンク『全国企業財務諸表分析統計(第57〜59版(平成26〜28年発行))』(畜産農業)