1.背景
近年、世の中のデジタル化が進み、申告納税手続きについてもデジタル化が促進されています。マイナンバーの活用や、行政機関の間でデータ連携を拡大することにより、相続に伴う手続きについて、遺族及び行政機関双方の事務負担が削減されるように取り組みが始まっています。
2 .過去の税制改正
既に施行されている国税に関するデジタル化・手続き簡素化の取り組みは、主に下記があげられます。
(1)相続税申告の電子申告開始
2019年10月より、2019年1月1日以降に開始した相続にかかる相続税申告書を電子申告により税務署へ提出することが可能となりました。まだ一部、電子申告に対応していない書類もありますが、利便性が向上しました。
電子申告する前にあらかじめ、財産を取得する人の利用者識別番号を取得する必要があります。既に、贈与税や所得税など他の税目で申告するために、利用者識別番号を保有している人は、その番号を使用できます。
(2)国税の添付書類の簡素化
2019年度税制改正により、国税関係手続きが簡素化され、2019年4月1日以後に提出する申告や届出について、一部の書類の添付が不要となりました。相続時精算課税の贈与税申告については、2020年1月 1日以後に贈与により取得する財産にかかる贈与税申告において、「住民票の写し」の添付が不要となっています。
3. ワンストップサービスの推進
死亡・相続に関する手続きについて、遺族の負担を軽減し、遺族に必要な支援を行えるように、各行政機関・民間事業者が連携してデジタル化・手続きの削減を目指して「死亡・相続ワンストップサービス」が推進されています。
具体的には、下記のとおりです。
(1)死亡届や死亡診断書(死体検案書)の提出をオンラインで完結する仕組みづくりに向けて、法務省・厚生労働省などが検討を開始し、法整備を進めています。
(2)法務省において、行政機関への電子的な戸籍記録事項の証明情報の送付を可能とする戸籍情報連携システムを、2023年度末を目安に、構築する予定としています。
(3)現在も、遺族が相続手続きを円滑に行えるようにエンディングノートが活用されていますが、それをデジタル化して、遺族に電子的に承継できるように、データ標準の作成を進めています。
(4)各自治体に死亡手続きに関する総合窓口である「おくやみコーナー」を設置するために、必要なガイドラインや支援ナビを政府が提供しています。
それにより、「おくやみコーナー」を設置する地方自治体が増加し、2020年度末現在、169の自治体が設置して、遺族に支援を行っています。
高齢化・多死社会を迎え、今後ますますワンストップサービスが推進されていくことでしょう。
(文責:辻・本郷税理士法人 http://www.ht-tax.or.jp/)
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