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B 取引相場のない株式の改正ポイント
 

1.平成29年度税制改正の趣旨
 現在、日本の中小企業では、深刻な人手不足に加え、経営者の高齢化が進行していることなどから、事業承継の円滑化が課題となっています。そこで、早期かつ計画的な事業承継をさらに促すため、今回の改正により、いわゆる事業承継税制(※)の制度をさらに使いやすくするための見直しが行われます。
 また、昨今、上場企業の株価の上昇に伴い、業績に大きな変化のない中小企業であっても、想定外に株価が高く評価されてしまうなど、株価の評価が実態にそぐわない状況も見受けられます。そこで、上場企業の株価の急激な変動が、中小企業の円滑な事業承継を阻害することなく、中小企業等の実力を適切に反映されるように評価方法の見直しが行われます。
(※)事業承継税制とは、後継者が経済産業大臣の認定を受けた非上場会社の株式等を現経営者から相続または贈与により取得した場合において、相続税・贈与税の納税が猶予される特例制度のことです。

2.改正のポイント
(1)事業承継税制の見直し
@納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件
 事業承継税制制度の適用を受ける要件に雇用確保要件があります。これは、事業承継税制制度の適用を受けてから5年間は、従業員数を平均で相続・贈与時の80%以上を維持しなければならないというものです。これが維持できない場合は、相続税・贈与税の納税猶予の認定が取り消されます。
 特に小規模事業者にとっては、この雇用確保要件が高いハードルになっており、事業承継税制の適用を足踏みさせる要因となっていました。そこで、この雇用確保要件の端数処理方法について改正があり、現行制度では、相続・贈与時の従業員数に80%を乗じて計算した数が1人に満たない端数があるときは、これを「切り上げる」としていますが、改正により「切り捨てる」こととされ、雇用確保要件が緩和されます。
 例えば、相続・贈与時の従業員が2人であった場合、現行制度では、維持すべき従業員数は2人(2人×80%=1.6人→2人(端数切上))であったのに対し、改正により維持すべき従業員数は1人(2人×80%=1.6人→1人(端数切捨))となることから、仮に従業員が1人減ったとしても、事業承継税制は継続して適用を受けることができます。
 これにより、従業員が5名未満の小規模な会社においては、制度がさらに使いやすくなります。

A相続時精算課税制度に係る贈与との併用
 相続時精算課税制度に係る贈与が、贈与税の納税猶予制度の適用対象に加えられます。
 現行制度では、贈与税の納税猶予制度は「適用対象外」でしたが、今回の改正により贈与税の納税猶予制度と相続時精算課税制度の併用が可能になります。
 今後は相続時精算課税制度と併用すれば、贈与税の納税猶予適用後に、認定を取り消された場合の多額の贈与税負担が発生するリスクが軽減されます。

B先代死亡時の相続税の納税猶予制度における認定相続承継会社の要件
 非上場株式等を贈与した人が死亡した場合の相続税の納税猶予制度における認定相続承継会社の要件について、「中小企業者であること」と「その会社の株式等が非上場株式等に該当すること」とする要件が撤廃されます。
 現行制度では、事業承継をしてから5年を経過した後も、先代が死亡した際に相続税の納税猶予へ切り替えるには、上記の要件が課されていました。今回の改正で中小企業であること等の要件を廃止することにより、生前贈与を行いやすくなり、事業承継のさらなる促進が期待されます。

(2)取引相場のない株式の評価方法の変更
 実態を踏まえた評価ができるよう下記の改正が行われます。

@類似業種比準方式の見直し(図参照)
(イ)類似業種の上場会社の株価について、現行に課税時期の属する月以前2年間平均が加えられます。
(ロ)類似業種の上場会社の配当金額、利益金額および簿価純資産価額について、連結決算が反映されます。
(ハ)配当金額、利益金額および簿価純資産価額の比重について、1:1:1となります。

A評価会社の規模区分の金額等の基準について、大会社および中会社の適用範囲が総じて拡大

 現行制度では、赤字になると株価が大幅に安くなる可能性がありましたが、改正後は以前ほど株価が安くはならないと考えられます。一方、大会社および中会社の範囲が拡大され、改正後に類似業種比準方式が適用される割合が増えると、純資産価額が大きい会社にとっては、評価額が引き下げられる可能性もあります。

図 類似業種比準方式の見直し

【改正前】



b、c、d:評価会社の1株当たりの金額
B、C、D:上場企業の業種別の1株当たりの金額

【改正後】


b、c、d:同上
B、C、D:同上

@類似業種株価(A)について、2年間平均が選択可能に
  「課税時期の属する月以前2年間平均」が加えられます。
A比準要素(B、C、D)について、連結会計上の数字に見直し
 類似業種の上場会社の配当金額、利益金額および簿価純資産価額について連結会計上の数字に見直されます。
B比準要素(B、C、D)の比重を「1:1:1」に見直し
 「利益3倍」の見直しにより、配当金額、利益金額および簿価純資産価額の比重が「1:3:1」から「1:1:1」に見直されます。

3.適用時期
 今回の改正の適用時期については、2.(1)(2)のいずれも、平成29年1月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税または贈与税について適用されます。

(文責:辻・本郷税理士法人 http://www.ht-tax.or.jp/


  • 2017年5月改訂版
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