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55 信託を活用した際の税務の取扱い

課税対象と課税の種類に注意

1.信託における税務上の基本的な考え方
 信託を設定すると、財産の経済的な所有者と、財産の管理者とが分離されます。
 財産の経済的な所有者は「受益者」であり、財産の管理者は「受託者」です。
 信託財産の名義は、委託者から受託者に変わり、法律上は受託者が財産の所有者となります。しかし、受託者は単に財産を預かり、その管理をしているだけです。
 すなわち、受益者が実質的な所有者ということになります。
 そこで税務上は、受益者に信託財産が帰属しているものとして課税をすることとしています。
 そのため、信託が設定されると、税務上は、原則として委託者から受益者へ財産の移転があったものとみなして課税することになります。例えば、「信託契約」を結んで信託を設定した場合、基本的には、委託者から受益者に財産の贈与があったものとして、贈与税が課税されます。
 また、「遺言」により信託の効力が発生した場合には、委託者から受益者に財産の遺贈があったものとして、相続税が課税されます。
 同様に、受益者の異動があった場合には、その受益者間で、信託財産に異動があったものとして取り扱われます。そして、信託財産から生じた収益については、異動後の 受益者に帰属するものとして取り扱われます。
 ただし、これはあくまで原則論であり、例外として集団投資信託や法人課税信託など、信託の形態によって課税の仕方が異なることがあります。

2.受益権の評価
 贈与や相続等で委託者から受益者に、財産の移転があった場合の受益権の評価は、「信託された財産の価額」によって評価します。すなわち、原則として、その信託財産の相続税評価額で贈与税、相続税等が課税されます。

3.不動産の信託による登録免許税・不動産取得税
 通常、不動産売買等による所有権の移転については、登録免許税・不動産取得税が課税されます。一方で、不動産を信託した場合、信託の設定による不動産の所有権の移転、すなわち委託者から受託者への所有権の移転に関しては、登録免許税は非課税とされています。また、不動産取得税についても、形式的な所有権の移転であることから課税されません。
 ただし、所有権移転の登記のほかに、不動産が信託財産であることの登記が必要となりますが、この場合の登録免許税は、以下のとおり優遇されています。

  建物 土地
登録免許税 0.4% 0.4%
※課税標準は固定資産税評価額となります。なお、軽減税率は考慮していません。

 なお、信託が終了した場合、信託の終了による不動産移転登記が必要となります。この場合の不動産取得税・登録免許税は、売買の際と同程度の負担額となるため留意が必要です。

4.信託に関する消費税の課税関係
 信託設定時は、対価の支払のない取引であるため、消費税は課税されません。
 ただし、負担付贈与に該当する場合には、消費税が課税されます。
 また、信託期間中は、信託財産となった建物を賃貸している場合の賃貸収入等で課税売上とされるものは、法人税・所得税と同様に、受益者の課税売上とされ、受益者に対して課税が行われます。
 なお、信託終了に伴う信託財産の移転は、設定時と同様、対価の支払のない取引に該当するため、消費税は課税されません。
 
5.信託の具体的活用と税務
(1) 事業承継における信託の活用
 例えば、後継者である子へ自社株の生前贈与を検討している会社オーナーから、相談を受けたとします。
 「私は、このたび会社の代表取締役を退任して、後継者である長男へ代表権を引き継ぎました。これを機に生前贈与等をして、自社株の承継を済まさなくてはならないことは分かるのですが、長男はまだ若く、完全に議決権のある自社株を渡してもよいのか迷っています。」
 こうした場合は、以下のような形で自社株に信託を設定すれば、解決できることがあります。
 委託者を現オーナーである父、受託者を信頼できる個人または法人、受益者を後継者である長男として自社株に信託を設定し、その際、自社株にかかる「議決権行使の指図権」を委託者で現オーナーの父に留保します。
 指図権とは、「信託財産の管理又は処分に関して受託者に対し指図を行う権利」であり、議決権行使の指図権を現オーナーに留保しておくことで、所有者は受益者である後継者となりますが、委託者である現オーナーの父が議決権をコントロールすることができます。
 ただし、税務上の所有者は受益者である後継者とみなされますので、後継者に贈与税が課税されます。
 なお、信託設定後の自社株の配当等は受益者である後継者が受け取ります。


(2) 後継ぎ遺贈型の受益者連続型信託
 受益者の死亡により、順次、他の人が、受益権を取得する旨の定めがある信託を、「後継ぎ遺贈型の受益者連続型信託」といいます。
 例えば、
 @現在は、委託者が、受益者になっていますが、
 Aその委託者が亡くなったら、受益権をAさんに、
 BAさんが亡くなったら、受益権をBさんに、
 CBさんが亡くなったら、受益権をCさんに、
というように、あらかじめ受益者を次々と決めておく信託です。
 具体的には、以下のような場合に有効活用できます。
・通常どおり、長男に財産を継がせるが、その長男が亡くなった後は、長男の配偶者や子ではなく、次男の子に継がせたい
・子がいないので、いったん妻に財産を継がせるが、その妻が亡くなった後は、弟の子に継がせたい。

 遺言書では、財産について一人目の承継者まで決めておくことはできますが、二人目以降の承継者を決めておくことができないため、これを活用すれば可能となります。
 ただし、無制限に認められているわけではなく、信託設定時から30年を経過した後は、1回しか受益権の承継は認められません。
 なお、税務上は、死亡により受益権が相続される都度、相続税が課税されます。

(文責: 辻・本郷税理士法人 http://www.ht-tax.or.jp/

 

 

 


 

 
  • 2017年5月改訂版
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