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【注目の話題】  

B 平成29年度税制改正のポイントの主要なもの(個人編)


1.個人所得税にかかる税制改正のポイント
 平成30年分以後の所得税申告においては、次のようになります。
(1)配偶者控除・配偶者特別控除の見直し
@配偶者特別控除が拡充され、納税者本人が適用を受ける現行の配偶者控除額38万円相当額が控除可能な配偶者の給与年収が150万円(現行103万円)に、適用上限の配偶者の給与年収が201万円以下(現行141万円未満)になります。
A納税者本人の所得要件に制限が加えられ、合計所得金額900万円超1,000万円以下(給与ベースで1,120万円超1,220万円以下)で控除額が漸減されます(図1)。

図1 配偶者控除額・配偶者特別控除額


(2)積立NISAの創設
 平成30年1月1日から、非課税累積投資契約に係る非課税措置(積立NISA)が創設されます。また、当制度は現行の非課税上場株式等管理契約に係る非課税措置(NISA)と選択して適用できます(図2)。

図2 積立NISAのイメージ


(3)既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充
@特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例の拡充
 当該特例の適用対象となる工事に特定の省エネ改修工事と併せて行う「一定の耐久性向上改修工事」が加えられるとともに、同特例の最大控除額(62万5,000円)の枠内で、一定の耐久性向上改修工事に係る費用に相当する住宅借入金等の税額控除が可能になります。
A既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除の拡充
 当該特例の適用対象となる工事に「一定の耐久性向上改修工事」で耐震改修工事または(および)省エネ改修工事を併せて行うものが加えられるとともに、その控除額を当該特例の最大控除額(25万円(50万円))の枠内で、一定の耐久性向上改修工事に係る標準的な工事費用相当額の特別控除が可能になります。
 なお、省エネ改修工事と併せて太陽光発電装置を設置する場合には、最大控除額が10万円ずつ上乗せされます(増改築等をした居住用家屋を平成29年4月1日から平成33年12月31日までの間に自己の居住の用に供する場合について適用)。

2.資産税にかかる税制改正のポイント
(1)取引相場のない株式の相続税評価における類似業種比準方式の見直し
@類似業種価額の見直し(平成29年1月1日以後の相続等により取得した財産評価に適用)
イ.類似業種の上場会社の株価につき、課税時期の属する月以前2年間平均が加えられます。
ロ.類似業種の上場会社の配当金額、利益金額および簿価純資産価額について、連結決算が反映されます。
ハ.配当金額、利益金額および簿価純資産価額の比重について、1:1:1となります(図表3)。
ニ.評価会社の規模区分の金額等の基準について、大会社および中会社の適用範囲が総じて拡大されます。

図3 類似業種比準価格算定式

【現行】

【改正後(平成29年1月1日以後の類似業種比準価格】


A株式保有特定会社(保有する株式および出資の価額が総資産価額の50%以上を占める非上場会社をいいます)の判定基準に新株予約権付社債が加えられます(平成30年1月1日以後の相続等により取得した財産評価に適用)

(2)広大地の評価の見直し
 広大地の評価について、現行の面積に比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直されるとともに、適用要件が明確化されます(平成30年1月1日以後の相続等により取得した財産評価に適用)。
 本年6月22日に国税庁は、改正案につきパブリックコメントの募集を開始しました(7月21日締切)。
  改正案によると、従来の「広大地の評価」の代わりに、「地積規模の大きな宅地の評価」を新設することとなっています。
 具体的には、@評価方法の変更、A面積要件の明文化、B適用できない土地の明文化、がなされることとなります。

(3)事業承継税制(納税猶予制度)の微修正
@納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件について、相続開始時または贈与時の常時使用従業員数に100分の80を乗じて計算した数に一人に満たない端数があるときは、これが切り捨てられます(現行・切り上げる)。
A相続時精算課税制度に係る贈与が、贈与税の納税猶予制度の適用対象に加えられます。
B非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予制度における認定相続承継会社の要件について、中小企業者であることおよび当該会社の株式等が非上場株式等に該当することとする要件が撤廃されます(平成29年1月1日以後に相続等または贈与により取得する財産にかかる相続税または贈与税について適用、所要の経過措置あり)。

(4)相続税・贈与税の納税義務の見直し
@国内に住所を有しない者であって日本国籍を有する相続人等に係る相続税等の納税義務について、国外財産が相続税の課税対象外とされる要件を、「被相続人等および相続人等が相続等開始前10年(改正前5年)以内のいずれの時においても国内に住所を有したことがないこと」とされます。
A国内に住所を有しない者であって日本国籍を有しない相続人等が、国内に住所を有しない者であって相続等開始前10年以内に国内に住所を有していた被相続人等(日本国籍を有しない者であって一時的滞在をしていたものを除く)から相続等により取得した国外財産が、相続税の課税対象に加えられます(贈与税についても同様とし、平成29年4月1日以後、相続等および贈与により取得する財産にかかる相続税および贈与税に適用)。

(5)固定資産税・不動産取得税におけるタワーマンション課税の見直し
@居住用超高層建築物(タワーマンション、以下、建築物)の固定資産税(都市計画税を含む)・不動産取得税(以下、「固都税等」)の課税につき見直しがされます。
A対象となる建築物の定義は、高さが60mを超え、複数階に住戸が所在しているもの。
B課税方法は、建築物全体にかかる固都税等を各区分所有者に按分する際に用いる当該各区分所有者の専有部分の床面積が、住戸の所在する階層の差違による床面積当たりの取引単位の変化の傾向を反映するための補正率(階層別専有床面積補正率)により補正されます。
C補正率は、建築物の1階を100とし、階が一を増すごとに、これに、10を39で除した数を加えた数値となります(平成30年度から新たに課税される建築物(平成29年4月1日前に売買契約が締結された住戸を含むものを除く)に適用)。

3.災害対応にかかる税制の規定の常設化(復旧・復興への迅速な対応措置)
(1)住宅ローン控除の特例
 現行の災害により居住の用に供することができなくなった年の限定適用に代えて、災害により居住の用に供することができなくなった年以後の従前住宅に係る適用年で一定の場合について本税額控除の適用が可能とされます (平成29年分以後の所得税に適用)。

(2)買換資産の取得期間等の延長の特例
 特例の適用を受ける者が、特定非常災害の指定を受けた災害のため、その買換資産等を予定期間等内に取得等をすることが困難となった場合には、税務署長の承認等の一定の要件の下、その予定期間等が2年の範囲内で延長されます。

(3)その他
 事業承継税制、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置、災害損失の繰戻しによる法人税額の還付、仮決算の中間申告による所得税額の還付等。

(文責:中央綜合税理士法人)

 

  • 平成29年8月改訂版
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