<< 前に戻る

目次へ >

個人・中小法人の法務と税務相談集Net配信へ

I 相続・贈与 1 相続の法務 @ 相続の開始  

(1) 被相続人の死亡と相続の開始

質問:
父が突然死亡しました。遺産や借金はどうなるのでしょうか。相続税はどのような場合に発生しますか。まず、どんな点に気をつけたらよいでしょうか。

要旨:

 相続等で取得する財産がある場合には、相続税法の規定により、被相続人の死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に所轄の税務署長に対して相続税の申告をしなければなりません。
 ただし、相続に係る正味の遺産額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)(注)を超えなければ相続税はゼロとなるので、相続税の申告は必要ありません。
 相続の正味遺産額の算出については、@被相続人の遺言があるか否かを調査、A相続財産と債務の額を調査、B相続人がほかにいないかを戸籍で調査、C遺産分割協議に入るような経緯を辿って求めるという流れが一般的です。
(注)平成26年12月31日までは、基礎控除額は「5,000万円+1,000
   万円×法定相続人数」です。

解説:

1 遺言の有無の確認
 有効な遺言があり、その中で相続分や遺産分割方法の指定などがしてあると、相続人はこれに拘束されることになるので、まず遺言の有無を確認する必要があります。遺言がない場合は、民法の法定相続分の規定に従うことになります (民法900条) 。

2 相続財産と債務の確認
 相続は、被相続人の有していた権利義務を継承する制度ですが、民法は相続人の意思によって初めから相続しなかったものとみなすことのできる相続放棄(同法939条) や相続財産の範囲内でのみ相続債務の責任を負えばよいという限定承認の制度 (同法922条) を認めています。
 したがって、これらの制度を利用するかどうかを決めるためにも相続財産の範囲を明確にするため、遺産などの積極財産と債務などの消極財産の調査が必要となります。そして、相続人が自己のために相続が開始したことを知った時から3カ月以内に、放棄あるいは限定承認の申述を家庭裁判所に対してしなければ、単純承認したものとみなされます(同法921条2号) 。なお、この熟慮期間内でも相続人が相続財産を処分したり、放棄あるいは限定承認をした後に相続財産を隠匿したりすると、単純承認したものとみなされます(同法同条1号、3号) ので注意が必要です。

3 相続人の確定
 相続人を確定させるため、遺産分割協議の対象者を定めなければなりません。そのために、まずは、亡父の戸籍謄本と除籍謄本を出生まで遡って取り寄せ、ほかに認知した子や先妻の子などの相続人がいないかどうかを調査する必要があります。
  なお、平成25年12月に民法の一部が改正(同法900条4号ただし書前半部分を削除)され、嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等となりました。このことから、例えば被相続人と婚姻に至らなかった愛人との間の子も調査の対象となります。

4 寄与者の有無
 相続人の中で、被相続人の事業に関する労務の提供や財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持や増加について、特別の寄与をした相続人がいるか否かを確かめる必要があります (同法904条の2) 。もし寄与者がいれば、他の相続人と協議して寄与者の寄与分を定める必要があります。

5 遺産分割手続
 遺産の分割は、遺産に属する物や権利の種類および性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態および生活の状況その他一切の事情を考慮して行う必要があります (同法906条) 。遺産分割は、相続人全員で行い、もし分割協議ができないときは、家庭裁判所の調停や審判により行うことになります。

6 相続財産の管理
 相続財産の散逸を防ぎ、将来行われる遺産分割手続までの間、遺産管理について十分配慮する必要があります (同法918条)。

(文責:中央綜合税理士法人)

 

  • 平成29年8月改訂版
  • このサイト内のすべての文章・図表の著作権は、株式会社銀行研修社および執筆者 に帰属しますが、お客様に差し上げたり、店内勉強会の資料として利用する等のための印刷・コピーは許諾致しますので積極的にご活用ください。ただし、著作権者は、この情報を用いて利用者が行う一切の判断について責任を負うものではありません。個別具体的な事例に関しては、専門家にご相談されることをお勧め致します。 
  • 本稿は、本文中に特に記述のあるものを除き、2017(平成29)年7月1日現在の法令・データ等に基づいています。 

企画・制作 株式会社銀行研修社
©2017
 中央綜合税理士法人 
http://www.chuo-ac.jp/